花輪理事長の独り言
中間総括
秩父地域における新規感染者はこの約3か月間は報告されていません。日本全体でも急激に減少しており、今のところ低水準で落ち着いています。一方、世界に目を向ければ、全く感染が収まる気配はありません。さらに、昨日(2021年11月30日)、変異株・オミクロンによる感染者が日本でも確認されました。今、このウイルスに対し、警戒感が広がっています。私は11月30日に秩父郡市医師会誌に「秩父病院のコロナとの戦い」というタイトルで寄稿しました。現状のコロナ禍の状況は刻々と変化しますので、今の私の考えも医師会誌に書いた文章の内容も、明日には変わって行くかも知れません。そんな訳で、2021年12月1日の時点でのコロナの状況を、中間総括として記録に残すべく、医師会誌に書いたデータを抜粋して、ブログにアップすることにしました。
1, PCR検査・抗原検査(表1、2021年11月6日現在のデータ)
当院における新型コロナウイルスに対する検査の種類、受診のタイプは様々である。
外来でのPCR検査は延べ3855回行ったが、陽性者は157人(陽性率4,1%)であった。内訳は別表1の通り、濃厚接触者は74人、(陽性率9、1%、)、次いで当院発熱外来79人、(陽性率5,6%)と高い。県よりの委託の発熱外来・PCRセンターは4人(1,9%)、入院前検査は0人であった。2021年11月6日現在の秩父地域の感染者589人の内157人(約26%)を当院で診断したことになる。
2、ワクチン接種(表1)
別表1の如く、接種総人数は8245人・16488回である(2人は1回のみ)
表1の如く、様々な接種方法、内容でワクチン接種を行った。
最初は医療従事者への接種であった。当院は、今年の1月に、埼玉県から秩父地域のワクチン接種協力病院(A病院)に指定され、医師会員等、医療従事者への接種と各病院へのワクチン配布を依頼された。
私は国の指示したワクチン接種の順番、諸外国でもそうだが、最初に医療従事者から行ったことはしごく当然、重要な意味があると考える。なぜなら
○ 医療従事者は感染者に接触する機会が多く、感染リスクが高い
○ 医療従事者が感染しないことは少しでも医療崩壊を防ぐことになる
○ 医療従事者は一般人と比べ、ワクチンの効果やリスクを理解でき、自身の接種に適切な選択が可能であり
○ 医療者が率先して接種することは、ワクチン接種自体に弾みがつき、全体の接種率の向上に繋がる
○ 言葉は悪いが、実験台としての役割と考えるからである。
メッセンジャーRNAという初めてのワクチンであり、実験台も含め、私は一人の医療者としてこれらは十分に理解できた。
仮に、医療従事者が30パーセントしかやらなかったら、一般の人はほとんど接種しなかったであろう。その結果、接種率とワクチンの効果は格段に落ちたに違いない。
しかし、最も大事な意味は「我々医療従事者がコロナと戦うための鎧を早く身につけるため」であろう。
●副反応(2021年11月6日現在)
以下に当院での1回及び2回接種を合わせ16488回・8245人のワクチン接種後(全例ファイザー)の副反応等のデータと対処法につい紹介する。
対象16488回の被接種者の概ね6割は65歳以上の高齢者であり、内約7割は80歳以上の超高齢者であった。
観察中の副反応
① 接種後の観察時間中に、何らかの症状の訴えがあった件数は57件(0.35%)
② そのうち明らかに副反応と考えられた件数は10件(0.06%)
③ 内1例をアナフラキシーと診断 (0.006%)*ショックではない
④ 予診票および問診の結果で、接種を中止した症例は3件(0.018%)
⑤ 接種前に被接種者から直接当院へ電話等でアレルギーおよびアナフラキシーの既往の申告があった症例は35例(予診票のアレルギーのチェック、花粉症等は除く)
⑥ 内訳は蜂刺され15例、薬剤(造影剤を含む)10例、食材5例、不明4例
⑦ 蜂刺され症例の内1例はアナフラキシーショックで当院に緊急搬送の既往があった。たこの症例を含め、2例がエピペンを携帯している
⑧ 特記すべきことは、申告のあった35全例に接種を行なったが、初回・2回目接種後、観察時間内に副反応は発症しなかった
*私は救急外科医・麻酔医であり、ショックの対処はスタッフも得意分野である。従って、当院はアレルギーの既往を訴えた被接種者を積極的に受け入れた
*アナフラキシーを発症した2例は抗ヒスタミン、ステロイドで軽快した
*1回目の接種後にアナフラキシーを発症した1症例に接種前に抗ヒスタミン剤を点滴静した後に2回目の接種を行なったが、副反応は出現しなかった
接種翌日以降の副反応
当院の職員及び関係者、約150人(300回)に行った接種(ファイザー)の翌日以降に発症した副反応は、接種部の筋肉痛、発熱、頭痛、倦怠感が主なもので、一般に言われている症状と大差はなく、重篤な副反応はなかった。
*新型コロナワクチン接種によるアナフラキシーショック死亡例は私の知る限りではない
*日本医療安全調査機構の「注射剤によるアナフラキシーに係る死亡例の分析」の提言の一行を紹介する
「薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の様態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフラキシーを疑い、アドレナリン0,3mg(成人)をためらわずに、大腿前外側部に筋肉注射する」
3、治療(表1)
2020年2月初旬より発熱外来を始め、その後、県よりの要請に答え、4月28に感染者専用病床を1床、5月7日の連休明けより3床、8月11日より5床、11月30日より7床、最終的に2021年2月13日より10床の感染病床を整備した。*県よりの指導により、2021年10月25日よりは感染者減少のため5床に、11月末より3床に減らしている。
当院は当初より以下の受け入れ条件を埼玉県に提示している。
- 公的病院が満床であること
- 秩父地域の感染者に限ること
- 中等症以下であること
- 重症化した場合には、埼玉県の責任において迅速に感染症専門施設へ転送すること
であったが、全てがそんな訳には行かなかった。
東京や県南地域と比べると、当初は秩父地域の感染者は少なく、当院の感染入院患者についても、第1波では入院は無く、2波の2020年7月に初めて3人の入院があった。その後しばらく無く、3波の11月に5人、12月に7人、2021年1月に14人、2月に7人、4波の5月に10人、5波の7月に10人、8月に19人、9月に5人、計80人である。幸い、2021年10月以降の感染者入院は無い。入院患者の内訳は秩父管内が59人、管外が21人であった。この内6人が重症化等で高次医療機関に転院となった。
●2021年9月より抗体カクテル療法を開始した(表1)
当院の少ない経験と多くの知見から、この療法は早期に行えば、重症化を防ぐことができると確信している。
4,抗体検査(表2 当院職員・抗体検査データ・グラフ)
秩父地域では2021年3月12日にワクチン接種が開始されましたが、当院では 職員のほぼ全員に、ワクチン接種前に抗体検査を実施しています。この結果、当然全員抗体は判定基準以下でした。これはその時点で感染者なしを意味すると思います。
当院におけるワクチン接種後の年齢別抗体価の変化
【試験対象】
当院職員のうち23歳から77歳までの男女(男性12名, 女性68名)の80名
(院内感染により抗体カクテル療法を受けた人は除く)
【計測方法】
C L I A法・ロシュ社・SARDS-CoV-2抗体(S)IgG定量 判定基準50.0未満(AU/mL)
(協力:秩父臨床医学研究所)
【結果と考察】
結果をグラフに示します。
① 接種後9〜10週後には全年齢層で抗体価の上昇が見られました。また40歳以上よりも23歳〜39歳までの年齢層で多く確認されました
② 全年齢層で接種後から34週までの間に経時的に抗体価は減少しました。
③ 抗体価は個人差が大きく、若年層でも低い人、高齢層でも高い人がいました
④ 抗体価の減少幅も個人差が大きいことがわかりました
年齢、個人により抗体価はさまざまです。一概に若いから、高齢だから、ということはありませんが全体的に若い年齢の方が抗体価は高い結果でした。しかしながら「抗体価が高い=感染しない」ということでは決してなく、感染する可能性はあります。
当院で発生した院内感染では職員2名が感染しました。当然この2名もワクチン接種が完了している人です。それぞれの抗体価は、1回目の計測が7699AU/mL, 2167AU/mL 、2回目の計測が2492AU/mL, 800AU/mL(*感染前)でした。院内感染した際、この2名に自覚症状はほとんどなく、二人は感染の初期段階で抗体カクテル療法を行いました。抗体カクテル療法が終了してから2週間後に測定した抗体価は108084AU/mL, 151119AU/mLと10万を超す極端な高値を示しました。また、抗体カクテル療法が終了してから10週間後に行った抗体価の結果は22742AU/mL, 54629AU/mLとやはり経時的に低下していますが、万単位の高価ではあります。
抗体価が感染予防・重症化を左右するとすれば、ワクチンの3回目の追加接種が必要であると考えられます。一方、抗体価が万単位を超える人にワクチン3回目の接種は必要か?
また、抗体の数値が低くても、抗体さえあれば、感染したとしても急激に抗体が増え、重症化しないであろうとの報告もあります。今後の研究成果が待たれるところです。
平常診療体制への復帰
8月17日最初の院内感染の確認以来、新規入院・予定手術等一部の診療体制を制限してまいりましたが、現在、院内感染は十分にコントロール下にあり、2021年9月8日から、平常の診療体制に復帰致しました。
今後も、引き続き、新型コロナ感染症の患者さんに付いての入院治療、ワクチン接種、濃厚接触者に対するPCR検査、発熱外来、PCRセンターとしての機能等を行ってまいります。
私の医師として生きた半世紀の中で「通常の診療・手術・検査が出来ること」がこんなに素晴らしい、有難いことであると初めて気付かされました。
出来るだけ早くコロナを収束させ、全精力を一般診療に注入できる日を念願しています。
ご迷惑、ご心配をお掛けしましたが、今後もより一層、感染防御体制を強化し、地域医療を行なってまいります。ご理解の程、宜しくお願い申し上げます。
『仮称・抗体カクテル療法センター立ち上げ』
この療法は最近大変有効であることが分かって来ました。まだ症例は少ないですが、当院での十数例の経験でも同様に有効性を確認しております。
現状での、この療法を行う条件ですが、外来での治療が可能となりました。ただし、投与後の副反応が発言した場合に備え、接種後24時間医療機関に連絡できる体制が確保され、状況により入院が可能であるとのことです。従って、実際には、新型コロナ感染症を受け入れている病院ということになります。
一方、医療逼迫・感染病床の不足に伴い、自宅療養中患者さんが増え続け、その中で重症化したり亡くなったりする事例が増えて来ています。
そこで当院では、自宅療養中の患者さんの内、適応基準を満たす患者さんに保健所や自宅療養協力医療機関と連携し「抗体カクテル療法」を行いたいと考えています。
当院の少ない経験と多くの知見から、この療法は早期に行えば、重症化を防ぐことができると確信しています。
今、この療法の適応基準や実施条件が定まっておりませんが、大変有効であることは間違い無く、当院でも適応症例があり次第、お引き受けし、治療を行うつもりです。
院内感染
8月初旬頃より、埼玉県でも感染者の急増で、感染者の入院が難しくなり、同時に重傷病床も不足、当院でも重傷者に対し、人工呼吸器を使用しての治療を行なわざるを得ない状況もありました。一方で自宅療養者も急増しており、重症化した場合の対処の難しさ、救急車の受け入れ困難が現実のものとなって来ました。
当院ではコロナ感染者専用病床を10床備えて感染者への治療を行っております。
こんな状況下で、痛恨の極みでありますが、8月17日に一般病棟の入院患者さんに初めてPCR検査陽性が判明、以来、8月24日の間に、計12名の患者さんと、病室担当職員2名(計14名)にPCR検査陽性が判明しました。感染した患者さんの大半はすぐに感染病床に移し、感染病床に収容できなかった患者さんは、特別個室感染病床を整備し、抗体カクテル療法等を行いました。その後は新規入院の中止、入院手術の中止等の対処、全入院患者さんと全職員に対する、最低2回/週のPCR検査の実施を続けました。新規感染患者さんの経過は良好です。その後、10日間感染者は出ませんでしたが、9月3日に陽性者が一人判明しました。
2名の職員は、二人ともワクチンを2回打っておりましたが、感染しました。すぐに抗体カクテル療法を行い2週間の自宅待機としましたが。二人ともほとんど症状は現れず、現場復帰しています。
今後は来週初めまで経過を見つつ、保健所・埼玉県のご助言を受け、当院の今後の診療体制を決定していくつもりです。
今回の反省から、予定入院・手術は原則ワクチン二回接種後の入院とし、当日の抗原・PCR検査の実施等を徹底するなど、院内感染防御態勢を今まで以上に強化するつもりです。
今回の苦い経験から、学んだ事があります。
① ワクチンを2回接種していない方に感染者が多く見られたこと。
② 一方、ワクチンを2回接種していても感染することもあること。
③ しかし、ワクチンを2回接種していた人は、感染しても重症化しないこと。
④ 抗体カクテル療法は大変有効であること。
許されるなら、出来る限り早期に、感染者の受け入れを再開し、加えて、医師会の先生方と協力し、自宅療養者への抗体カクテル療法の実施等、コロナ感染患者さんへの治療を継続して行きたいと考えています。
同時に、今までと同様に、一般患者さんへの入院治療・手術も行っていく所存です。
当然、若者へのワクチン接種、特に小学生のご家族、中学生とそのご家族への接種を早急に行いたいと考えています。
このことが当地域に於ける、秩父病院の使命と心得ております。
ご迷惑をおかけしておりますが、早く通常の診療、生活、社会が戻ることを願い、めげずに頑張りますので、何卒ご理解の程宜しくお願い申し上げます。
コロナ対策を振り返って感じた事
2020年2月より当地でも始まったコロナ禍は1年半を経過した現在、日本は第5波に見舞われ、感染者が大幅に増え、感染者の入院治療もままならず、自宅療養者が急増しています。
私は、2021年5月10日(第9報)のこのブログに
『コロナ禍は緊急事態を過ぎもはや地球規模の災害です。コロナとの戦争といっても良いでしょう。しかし、日本では臨戦態勢とは程遠い状態』と指摘しました。三度目のより広域の緊急事態宣言、蔓延防止法は発せられましたが、いまだ、政治家や行政の意識は変わっていない様です。この結果、国民の意識も大きく二つに分かれるように思います。「ただ怖がり自粛・自粛」と「無知・無関心・他人事」です。自由主義国家の日本では強制的な施策は出来ないことは喜ばしいことです。しかし、コロナとの戦争なのですから、国民の意識も変わらなければいけません。
最近、やっと、テレビ等の専門家やコメンテーター、政治家の言葉に「災害級」という表現が現れ、ついに今はコロナ禍の現状を「災害」「有事」と言い出しました。「やっとわかったか?」と私は思います。
私はそうなった原因を独断と偏見は承知で推測してみたいと思います。
1,国民、市民、医療従事者等すべての人の危機意識の欠如。
2,新型コロナウイルス感染症に対する、正確な認識の欠如
3,マスコミの市民の動揺をあおる報道・世界の正確な情報の欠如・情報量の偏り
4,無知と利己主義、他力本願
5,国家、地方行政システムの不備・対応の遅さ・縦割り・前例主義・リーダーの欠如
6,行政、医師会、保健所、現場医療機関等のコミュニケーションと協議の欠如
7,非常時(有事)ということを忘れた、度を過ぎた個人情報保護と自由という言葉の履き違え、おかしな平等意識
言い出せば切りがないので、より具体的な私が痛切に感じていることを列記します
① 私は、唯一ワクチン接種がコロナに対するきわめて有効な手段、つまり感染と重症化を防ぐ唯一の方法と考えています。しかし、マスコミは、副反応等のマイナス面を話題にし、接種を控える風潮を助長しているように思えてなりません。
② 若者にワクチン接種を希望しない人が多いことから、ワクチンの安全性のメリットを示し、逆に、感染後に後遺症が残るという脅かし、さらに、接種したら何かしらの、「ご褒美」を挙げるという。メリットと脅かしはまだ、良しとして、「ご褒美」は開いた口がふさがらない。これでは、日本人としての資質、品位が疑われる醜態である。「他人の為、家族の為、仲間の為にワクチンを打つのではないのか」情けない。
③ 新型コロナ感染症の疾病としての怖さ
正直、まだ私にもわかりません。しかし、私どもが常日遭遇している疾患、がんや心筋梗塞、脳卒中等と比べると、命に直結するという意味ではそれ以上に恐ろしい病気とは思えません。
新型コロナウイルス感染症は早期に対処すればまず死ぬことは無いと思っています。
今のところ、決め手はワクチンしかないと考えています
当院で行なった新型コロナウイルスワクチンの接種は、2021年7月28日現在、初回および2回目接種の合計が、11514回と1万件を超えました。
2021年6月6日に開始した、日曜日のドライブスルーによる3回の500人、4回の1000人接種、7月25日の500人接種が事故なく終了し、やや安堵しています。
今後も8月1日と8日の日曜日の500人(2回目)、および平日の接種を9月末まで予定しています。
ドライブスルーの1000人接種では梅雨、テントが飛ばされそうな強風と豪雨、猛暑と、毎回辛い状況がありました。予想外であったのは超高齢者の被接種者が自身で運転してくる方々が多く、常に事故の不安があり、私の気持ちは休まる暇はありませんでした。スタッフの内、二人が熱中症になりましたが大事に至らず。幸い車の事故もなく終わりました。昼のお弁当が唯一の楽しみでした。スタッフにこんなつらい仕事を強いて良かったか?『疲れた‼️、二度とやりたくない‼️』が今の心境です。皆も同じ思いでしょう。
一方、今日本の状況は私の予想通り、悪化の一途を辿っています。私には、この原因がオリンピック・パラリンピック開催とか、緊急事態宣言の発出の時期とか、規制・自粛の要請の程度とか、目に見える要因のみとは思えません。悪化とは単に感染者の急増ではありません。人々の心が沈んでいく、あるいは若者の無責任があるとしたら、それこそが悪化の重大な原因の一つです。今、経済か感染抑制か?などと言っている暇はありません。社会が崩壊してはなりません。『私には、新型コロナウイルス感染症が、社会を崩壊させる程の重篤な病気とは思えません』何かがおかしい。政府も専門家のコメントもマスコミも、もっと状況を正確に伝えるべきです。不安をばかりを煽ってはいけません。
死者は何歳なのですか?基礎疾患はあるのですか?癌やその他の疾患との死亡率の比較は? 自分で自分の首を絞めている風潮が、マイナス思考が、たまらなく嫌です。
ワクチン接種はあくまで希望者は、その通りです。初めて開発されたものですから当たり前でしょう。しかし、新型コロナが発症して、1年7ヶ月が経過し、第5波の真っ只中、何度目かの緊急事態宣言が発出されている現在、個々の被接種者の意識に対する社会的コメントは、何かおかしい。今、感染者の主体は若者です。彼らがワクチンを打たなければ決してコロナは収束に向かいません。そのため、彼らに脅かしと、彼ら自身のメリットを理解させて、ワクチンを接種させようとしています。これは根本的に間違いです。ズバリ言います『自分の事のみを考えないで、他人のこと、家族のこと、社会のことを考えて下さい、もっと現状を直視し、当たり前の危機感を持って下さい』
今年の2月に初めてワクチンが接種された頃とは違います。一部の基礎疾患のある人を除けば、『ワクチンの副反応が怖いので接種はしない』は、私には無知、無責任としか思えません。
以下に当院での11514回のワクチン接種(全例ファイザー)の副反応等のデータと一般の関連データを紹介します。
対象 11514回の被接種者の内訳 約9000回(78%)は65歳以上の高齢者であり、内約70%は80歳以上の超高齢者でありました。
1、 接種後の観察時間中に明らかに副反応と診断件数した症例は5件です。(第13報で報告済み、以後無し) 0.05%以下
2、 内1例をアナフィラキシーと診断(第13報に報告済み) 0.01%以下
3、 予診票および問診の結果で、接種を中止した症例は2件です。(第13報で報告済み、以後無し) 0.02%以下
4、 接種前に被接種者から直接当院へ電話等でアレルギーおよびアナフィラキシーの既往の申告があった症例は23例(予診票のアレルギーのチェックは除く)です。内訳は蜂刺されによるものが12例、薬剤9例、食材1例(エビ)、不明1例です。蜂刺され症例の内1例はアナフィラキシーショックで当院に緊急搬送の既往がありました。この症例を含め、2例がエピペンを携帯しているとのことです。申告のあった全例に接種を行いましたが、初回・2回目接種後、観察時間内に副反応は発症しませんでした
5、 接種(モデルナ)の翌日以降の副反応発症のデータは、7月26日に厚生労働省から1万人当たりの発症件数が発表されました。接種部の筋肉痛、発熱、頭痛、倦怠感が主なものです。2回目に多く認められたとのことです。
当院の職員及び関係者、約150人(300回)に行った接種(ファイザー)の翌日以降に発症した副反応は、上記の結果とほぼ同じでした
6、 新型コロナワクチン接種によるアナフィラキシーショック死亡例は私の知る限りではありません
7、 日本医療安全調査機構の「注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡例の分析」の提言の一部を紹介します。
① アナフィラキシーショックはあらゆる薬剤で発症の可能性がある。複数回、安全に使用できた薬剤でも発症し得ることを認識する
② 造影剤、抗菌剤、筋弛緩剤等で発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射(ワクチンは筋肉注射)で使用する際は、少なくとも、5分間は注意深く観察する
③ 薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の様態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフィラキシーを疑い、アドレナリン0.3mg(成人)をためらわずに、大腿前外側部に筋肉注射する
④ 第1選択として、静脈確保やエピネフィリン1mgの静注は推奨されません。
繰り返しになりますが、現状ではワクチン接種を早く、大勢に接種する以外ありません。そして、ワクチンが足りないとすれば、その現状、地域に即した接種を臨機応変に行う必要あります。今は高齢者より若者、感染の機会が多いであろうと思われる職種、団体を柔軟に考え、あらゆる機会を捉えて接種するべきです。
7月28日、東京都の感染者が過去最多、3000人を超え、全国の感染者は9576人と1万人に迫る勢いです。
正確な知識と備えさえあれば、ワクチンは怖くありません。コロナも恐れ過ぎることはありません。オリンピックの日本の躍進は希望への光です。真の緊急事態の意味を全員が考える時です。有事に於ける心構えと正確な情報を根拠にした、個々の冷静な判断こそが求められます。
先日、一医療従事者の方から匿名でお手紙を頂きました。
院内メールで職員に知らせました。ただ嬉しくて涙が出ました。金メタルを取ったアスリートの涙、少しだけ似ているかも知れません?
感謝の気持ちを込めて、ご紹介させて頂きます.
超高齢者に対する1000人接種
2021年6月27日(日)初めての1000人接種を行いました。正確には、3週間前に1回目を接種した、すべて85才以上504人に加え(2回目接種)、概ね80才以上の初回接種の504人の計1008人です。1000人超えという事で、多少の不安はありましたが、全く問題なくスムーズに終了しました。
6月6日の500人接種開始以来、反省と修正を重ねたことと、何より「天の時・地の利・人の和」に恵まれたことでしょう。この梅雨時、雨も降らず、暑くもありませんでしたが、孟子の教え通り、「人の和にしかず」・多くの人たちの協力のおかげでありました。
当院の職員を含む70名を超えるスタッフがこの日の接種に参加しました。約半数はボランティアの方々です。今回から、医師、看護師に加え、歯科医師会の先生方と当院の歯科医師が「打ち手」に加わりました。秩父薬剤師会、調剤薬局の先生に注射器へのワクチン分注を担って頂きました。この作業はかなり繊細で注意と根気が必要な作業です。ワクチンの知識が豊富な薬剤師が適任です。当院ではベテラン看護師もこの作業に加わります。
実際のワクチン接種は5つのブースで行いました。①病院玄関・救急入口・エントランススペースに配置した、ドライブスルーブース3箇所、②接種される方が自身で運転して来たケースに対応する完結型駐車場ブース、③タクシー、自転車、徒歩等で来院した方に対応する院内(外来)ブースの5箇所です。
問診は当院の医師、研修医に加え、医師会の先生方にもお願いしました。
各ブースには最低3人、できれば4人が必要です。①問診医 ②打ち手 ③補助(打ち手補助・本人確認・接種券へのシール貼り・接種後の注意・観察時間の指示・説明・次回接種の説明等々)
さらに、当院のドレイブスルー方式では屋外の作業があります。交通整理、敷地内待ち駐車場での車列の整理、各接種ブースへの誘導、接種後の観察専用駐車場への誘導をしなければなりません。もちろん接種後の観察と副反応への対応の準備もしています。加えて、車列での待ち時間を利用し、主に事務職員による予診票の確認作業があります。
実際には、完璧に記入された予診票を持ってくる人は少数です。体温、名前、接種希望の記載がないのは普通で、ほとんどの人は封筒のまま差し出します。従って、車列待ち時間での書類チェックはスムースな接種作業を行うためには必須です。これには当院の歯科衛生士等の歯科職員も参加しました。
車の誘導は、初回接種か2回目か、運転手自身の接種か否か、混雑具合による各ブースへの振り分け等、臨機応変の指示が必要となります。この屋外作業は最も体力を使い、きつい重労働であります。この作業に多くのボランティアの方々にご参加頂きました。もちろん、当院の若い事務員や私よりはかなり、あるいは少し若いスタッフ達も良く頑張りました。本当に頭の下がる思いであります。
打ち手のみならず、平沼会長はじめ秩父歯科医師会の先生方には、接種後の観察駐車場での見守りと案内を担って頂きました。熊木町会の方々、栗原所長はじめ秩父臨床医学研究所のスタッフ、職員家族、元職員、秩父メディカルフットネスのスタッフ、友人達、正に「人の和」がこのプロジェクトを可能にしました。
皆の一番の楽しみは昼食のお弁当です。長谷川歯科部長が担当となり、リクエストにもこたえ、市内の複数のレストラン、食事処に毎回オーダーしています。何種類かのお弁当選びはほっとするひと時で、疲れを忘れさせます。また、冷えた大量のスポーツ飲料等も市内の商店から直送してもらっています。終了時にはクーラーボックスは概ね空となります。
私が最も危惧したこと、それは超高齢者が自身で運転した来た場合です。今回の1008人の内半分は2回目接種の85歳以上、半分は初回接種の若干の70代後半を含む80代です。運転手も必ずしも若者ではありません。交通整理・誘導も一筋縄ではいきません。また、接種時に車のエンジンを停止するよう指示していますが、これも100%は守られません。アイドリングストップはブレーキを緩めると走り出します。電気自動車は全くエンジン音が聞こえません。私が最も心配であったのはこれらに関わる事故でありました。
大きな赤い旗を作成したり、車の前に決して出ない事、運転者を信じない事など、十分に注意を払った結果、幸い事故は今のところ起きていません。安堵しました。
一方で、秩父地域の高齢化と高齢者の生活の実態の一端を垣間見た思いです。
このように、ドライブスルー方式は多くの人材とエネルギーを使う負担の多い接種方式でありますが、振り返って、この方式でなければ接種できなかった、あるいは接種する機会がなかった高齢者が多いことを知りました。高齢者に対するドライブスルー方式のワクチン接種は大変有効であると確信できました。
副反応については、80代後半と90歳を超える4人の方が、嘔気、頭痛、めまい等を訴え、救急外来で経過観察・点滴等を行いましたが、ワクチン接種が原因かは不明です。いずれも1時間程度で回復され、帰宅されました。
当院は、今年(2021年)3月12日に最初に医療従事者への先行接種を開始して以来、現在までこれを続け、5月28日よりは並行して高齢者に対する接種を行っています。さらに、6月6日(日)より超高齢者に対し、毎日曜日にドライブスルー方式により500人・1000人の接種を続けています。また特別養護老人ホームの入所者と職員200名に対し出張接種も行いました。その接種総数は延べ6700回になります。
これらのすべての接種における、接種後から観察時間内に確認された明らかに副反応と診断した症例は5件です。いずれも若い方で、すべてに喉の違和感・胸部不快感を訴えました。その内一人は、四肢体幹に蕁麻疹様の発赤が見られ、安静・点滴・抗ヒスタミン剤投与を行いましたが、酸素化、意識、血圧に問題なく、エピネヒィリン投与には至りませんでした。一応「アナフラキシー」と診断しました。他の4人は安静ですぐに軽快、念のため二人に喉頭にボスミン加、生食スプレーを行いました。
予診票・問診について記載します。
現在まで二人の方の接種を見送りました。一人は「前日に飲酒し、その後全身に発赤出現、接種時にも発赤が続いていた」もう一人は「インフルエンザワクチン接種後に倦怠感あり」
との訴えで中止となりました。
その他、接種見送りを検討した事例は、予診の段階で蜂刺されによる「アナフラキシー」を、今回一人の方が「アナフラキシーショック(意識消失)・以後常にエピペン持参」の既往を申した3例があります。この3人は、本人の強い接種希望があり、万全の体制を整え、接種を行いました。いずれの方も問題なく終わりました。その他、37度5分位の発熱は何人かいましたが、本人の症状や体調を確認の上、30分の経過観察として接種しました。従って予診票・問診による接種見送りは今のところ2人のみです。
私の印象として、副反応の発生する確率はかなり低く、重篤な副反応はさらに少ない、十分な観察と副反応に対する準備をしていれば、多くは接種可能であると感じています。
当院では全ての接種ブースに医師・看護師を置き、緊急薬品と緊急連絡体制を整えています。
今回、テレビ朝日と医療情報サイト(m3.com)の取材を受けました。
ニュース番組やテレビ朝日ニュースサイトで配信されました。
コロナ収束に向けて、私たちの取り組みが、より迅速で大勢のワクチン接種への火種・刺激となることを心から願っています。
テレビ朝日でのニュース動画は下のリンクから見ることが出来ます。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000220647.html
毎日新聞・秩父FMの取材
6月13日(日曜日)、毎日新聞記者さんの取材がありました。記事はウエブサイトに先行配信され、新聞記事は6月18日の朝刊に載りました。
以下、紹介します。
同日午前中に、秩父FMの取材とライブ放送もありました。
これらの情報発信が、さらなるワクチン接種の拡大、迅速化に繋がることを願っています。
2021年6月18日(金)毎日新聞朝刊から転載
6月13日(日曜日) 504人の高齢者に対して2弾目の接種を行いました。
今回は前回の経験を活かし、多少変更を行い、さらにスムーズに接種を完了しました。
接種を受ける方たちの年齢構成はほとんどが85才以上で、100才越えの超高齢者も混じり前回と概ね変わりませんでした。
しかし、院内での接種は前回の68人(接種者自身の運転34人・その他タクシー、路線バス、徒歩・自転車等)に対し、今回は94人(接種者自身の運転53人・その他)と増加しました。接種者自身で運転して来る割合は年齢が若くなるほど多くなる傾向が見られました。
幸い、今回も全く副反応は認められませんでした。
変更・改善
1、接種場所を一か所変更
2、雨天用のパラソルを整備
3、接種される方が運転して来た場合に備え、問診表等の書類整理のため、駐車場内にテントスペースの増設
4、院内接種場の整備・スタッフ増員
5、院内接種者に対し、駐車場と院内接種場の歩行補助(車椅子・傘さし補助等)
考察
1,午後に一時期、雨が降ったが、パラソルが有効であった
2,ワクチン接種に対するドライブスルー方式が十分理解されていない
3,今後、年齢層が下がるに従い、接種される方自身が運転してくる割合が高くなるであろう
4,前回の接種と合わせ・計1008名の接種を通じて、ほとんどの方は、ドライブスルー方式でしか、接種の機会・方法がないであろうと考えられた。従って、超高齢者に対して、ドライブスルー方式は大変有効であると確信できた。
5,一方、年齢層の低下従い、この方式を見直す時期が来る事を念頭に置く必要がある。
1000人接種プロジェクト始まる
2021年6月6日、85歳以上504名にワクチン接種を開始しました。
高齢者のADL、梅雨時であること、当院の駐車場を含む周辺環境を考え、ドライブスルー方式で行いました。接種ブースは3箇所、急遽、病院外来で1箇所の計4箇所で行いました。
接種は午前9時に開始し、午後4時に終わり、極めて順調に実施できました。今後3週間後には、初回接種と今回接種した方達が加わり、1000回の接種となりますが、十分に可能と思われます。
この方式は、私の知る限り初めての方式であり、今後の8月8日まで続く、9回の日曜日の接種に今回経験を生かすため、さらに他施設で行う接種の参考にして頂きたいと考え、問題点と対策をいくつか書き置きます。
1、40名弱の方が、自分で運転して来られました。数名がタクシー、路線バスで来られました
2、自分で運転して来られた方達は、車から降り、駐車場・バス停から歩いて頂き、急遽院内で接種を行いました
3、この方達の内、何人かは、歩行がおぼつかない人も見られました
4、お一人は接種後、一旦自宅に帰った後、接種していないと思い込み、再来院しました。
接種しない、あるいは2回接種してしまう可能性もあり得ると感じました
5、副反応は全くありませんでした
6、接種後の観察は主に歯科医師会の先生方にお願いし、15分あるいは30分経過した方達に最終確認を行い、副反応をチェックしていただきましたが、ほとんども方達が「車の中で接種して頂き動かずに済み助かりました」と感謝されたとのことです
7、問診票の記載は多くは不十分で、駐車場にいる間に、スタッフが各車を周り、問診票のチェックや書類の整理を行いましたが、これは大変有効でした
8、自分で運転してきた方達は、この作業が出来ず、接種するまでに時間が掛かりました
9、ほとんどの方は時間枠を守り来院されましたが、日にちを間違えた方が若干名いました
10、 多くの車が県外ナンバーでした。このことは、秩父を出ている、子供さんや孫がわざわざワクチン接種のために帰って来た事が推察されます。
11、 一方で、85歳を過ぎた方の運転は、複雑な物を感じ得ません
問題点
1、 交通整理等に多くの人員が必要
2、 雨天、猛暑の対策
3、 接種される方への、事前の接種システム等の情報の伝達が必要
4、 特に、接種される方への、ドライブスルー方式の周知が必要。当院ホームページにも詳細を表示
5、 長期戦に備え、さらに多くの、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師等の専門職の協力依頼・確保が必要
6、 アルバイト、パート職員の雇用が必要
7、 路線バス(西武バス・小鹿野町営バス)の病院敷地への乗り入れについては、ご理解いただき、次回の13日からは、乗り入れなしとなった。(初回の6日は、西武バスより職員を派遣して頂き、交通整理をお願いした。感謝申し上げる)
8、 1000人接種体制ではドライブスルーと院内接種と併用が必要と思われる
9、 今後接種者の年齢層が若くなるに従い、自身で運転してくる接種者が増えることが予想される。
10、 駐車場内で車を動かさず、問診、接種、観察を全て完結する方式を模索する必要がある
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