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花輪理事長の独り言

歳を取るということは、悪いことばかりではない・・・

2014年11月22日 西武秩父発7時50分のレッドアロー号の車窓は正に秋満載の景色であった。赤や黄色の紅葉と杉の深緑のコントラストが朝日に映えて美しい。今日は待ちに待った、西伊豆への釣行である。10月は台風でダメ、11月の最初の連休も北風で満足な釣りは出来なかった。このところ忙しい日々が続いた。毎日2、3件の予定手術に加え、緊急手術がたくさんがあり、かなりストレスが溜まっていたので、病院から離れていくに従って、呼吸が楽になって行く感じがした。池袋で踊り子号に乗り換え、今度は左に見える相模湾の海を見つめながら、ウイスキーの水割りを飲みながら、何時になく過去と最近の出来事をゆったりと振り返った。

医者を始めて43年、今のところ現役を続け、忙しさと仕事内容は絶頂の感がある。常に前を向き、振り返らずやって来たが、そろそろ区切りをつけないと何もやれない年齢になってしまうと言う焦りもある。しかし、歳を取るということは、悪いことばかりではないのかも知れない。

最近、救急医療功労とのことで、厚生労働大臣から表彰された。これすなわち歳を取ったことの証であるが、自分が入れ込んできた救急医療が認められたとなれば、悪い気持ちはしない。有り難いことである。

昨年、埼玉県外科医会誌に「地方外科医のボヤキ・嘆き・呟き」というのを書いた。これも年を積み重ねそれなりの経験をしないと湧いてこないものであるが、これが結構受けて、今度は、「ドクターマガジン」という雑誌の巻頭「Doctor′s Opinion」の原稿を依頼された。私は最近、大学等の極端な専門医教育と風潮とも言える医療内容に非常な違和感と危機感を持っていたので、遠慮なく自分の思うところを書いた。これも十分に還暦を過ぎないと言えないことである。タイトルは「総合医養成こそ地域病院の使命だ」とした。最近若い研修医と触れ合うようになって、医師の教育に興味を持つようになった。「地域医療に役に立つ医者を養成したい」これを私の医者人生の最終章のライフワークにしようと思っている。

同時期、『月刊/保険診療』という雑誌のインタビューを受けた。インタビュー記事というのは、往々にして自分の真意が伝わらなかったりして、歯がゆい思いをすることも多いものだが、この記事には満足であった。客観性と言う面で、嫌味もなく、私が自分で書くより以上に、私の気持ちと言いたいことを十分に引き出してくれていた。この二編をブログに掲載し、ご理解とご批判を仰ぎたい。

 釣果はまあまあであった。満足できたことは、46フィートの自船を初めてシングルハンドで操船したこと。まだしばらくは仕事も遊びも両立できそうである。

『ドクターズマガジン』2014年12月号 巻頭「Doctor’s Opinion」のPDFはこちら

医学通信社発行 『月刊/保険診療』 2014年11月号
コーナー「日本の元気な病院&クリニック」(p.2~p.5) 保険診療2014年11月号のPDFはこちら

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9月1日医療連携会【配布パンフレット(PDF)掲載】院長ブログ

9月1日に秩父病院医療連携会を開催しました。ご案内を広く、医師会、歯科医師会、薬剤師会の先生方のみならず医療スタッフの方々、行政の医療関係者の方々等にさせて頂き、200名を越える方々のご参加を頂きました、

『地域で地域患者さんが十分な医療を受けられること』が私の夢であります。

それには、当地の医療機関、医療関係者全体が同じ目的意識を持ち、それぞれの役割を担い、全体として質の高い総合病院、あるいは、いわゆる地域包括ケアシステムの秩父バージョンを作りあげなければなりません。それぞれの医療機関等がそれぞれの機能を知り、当地域に足りないもの、可能なものを認識した上で、緊密な連携を取り合うことが必要です。その意味から、最初に当院から情報発信することとしました。

 医療は進歩していますが、当院も同じように進歩しているつもりです。生意気なようですが、大学病院等より当院のほうが優れていると感じている所も多くあります。私はまだまだ多くの分野で『出来る』と思っています。なんでも遠方の大病院への紹介は残念でなりません。最近では、救急車による管外搬送も増加傾向で、年間約500人の患者さんたちが管外高次医療機関に運ばれています。少しでも地域完結を目指して、努力して行きたいと考えています。

  今回特別講演に埼玉県保健医療部医療整備課長の小野寺亘(わたる)氏

をお招きし、『埼玉県における地域医療の課題と今後の方向性』という演題でご講演を頂くことができました。超高齢化を向かえる日本の医療も、病院の機能分担・地域医療ビジョンの策定が法制化されました。正にタイムリーで有意義な講演であったと思っています。

 

 私がこの医療連携会に期待したことは、当院のアピールだけではありません。これを機に医療関係者の意識が活性化されることです。医師会、自治体病院、行政、当然当院の職員も、同じ目的に向かって進んでいくきっかけとなればと考えています。

秩父病院医療連携会パンフレット.pdf

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当日のプログラム

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当院常勤医師・歯科医師紹介

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大腸3D-CT(CTC)の紹介

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大野外科部長 当院の内視鏡外科手術について

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長谷川歯科部長による当院歯科の紹介

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小野寺亘氏による特別講演

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200名を超える方々にご参加いただきました。


レジナビフェアに参加

6月15日、東京ビックサイトで開催されたレジナビフェア2014 for Resident in東京に初めて参加しました。会場は日本全国より大学病院をはじめ有名病院が参加し、約300施設と多数の病院が参加していました。

レジナビHP内、秩父病院紹介ページはこちらから≫

当院は、ちちぶ医療協議会の1病院として、秩父生協病院と一緒に参加しました。

当院の医師育成ポリシーである、

『地域医療を担うことのできる医師、すなわち、専門性を併せ持った総合医の育成』をキャッチフレーズに、

具体例として

1、   日本外科学会・日本消化器外科学会専門医の取得と外傷外科・整形・形成外科等の

   基本的知識と技術習得による、一般外科医の育成

2、   日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本プレイマリ・ケア学会認定家庭医の

   取得を基礎とした、総合診療内科医の育成

を掲げ、また、日本外科学会定期学術集会で発表した『地域の外科医療を支えるための当院の取り組み』をポスター展示し、研修医の先生方に訴えました。

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折しも、ワールドカップ、日本対コートジボアール戦があり、この影響か?後期研修医の先生方の参加が例年より少なかった様ですが、当院のブースには5名の先生方が来られました。地元秩父出身の方も2名おり、今後の経緯が期待されます。当院よりは救急対応に対するテーマディスッカッションにパネリストとして、山田正己先生が参加しました。

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今回、参加の準備から始まり、実際に参加してみて、大学病院等では出来ない、当院ならではの医師育成の可能性を改めて実感した次第です。


第114回日本外科学会定期学術講演会で学会発表を行いました

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2014年4月3日京都で開始された上記学会に大野哲郎先生が『地域外科医療を支えるための当院の取り組み』という演題で発表しました。

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内容は医師の確保が根本で、そのための方策として、若い医師にとって魅力ある病院となることが重要であり、当院が行っている様々な取り組みを紹介しました。また目標は当院のポリシーである『地域医療に役に立つ医師の要請』であることをアピールしました。聴講された先生方よりの質問も多く、有意義な議論が行われました。

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~特別講演~

 山中伸弥教授による  『iPS細胞研究の現状と再生医療に向けた取り組み』

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埼玉県外科医会学術講演会が開催されました

平成26年3月8日、秩父外科医会が企画運営し『地域医療における外科医と総合医』というメインテーマで講演会が開催されました。

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内外より100名を越す多くの先生方が参加され、講演会後の懇親会も極上ワインに酔いしれ、大変な盛り上がりでありました。その内容を簡単にご紹介します。

 

1、 基調講演  前慶応義塾大学病院長 相川直樹先生

   『地域医療における外科医と総合医』

相川先生は日本の救急医療、感染症、ショック等の第1人者です。また、アメリカ、カナダの日本大使館のメディカルアドバイザーや医師国家試験や医道審議会の委員長等、国の医療行政にも深く関与している先生です。広い見識から、近年大きく変貌した外科全般の状況を明確に指摘し、地域医療における今後の外科診療について大きな示唆を頂きました。

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2、教育講演  日本医科大学総合診療科教授 安武正弘先生

   『日本医科大学における総合診療科の役割』

安武先生は同大学の総合診療科最初の大学院教授で、専門は循環器疾患 ですが、大学病院における総合医の役割について、総合医育成を含め、専門医の視点からのご講演を頂きました。

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3、特別発言  秩父外科医会員  南須原医院 南須原宏樹先生

   『在宅での麻酔科的緩和医療』

在宅医療の現場のご講演を頂きました。先生は麻酔科専門であり、在宅 における緩和医療等のご講演を頂きました。 

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4、特別講演 元内閣府・厚生労働事務次官、前人事院総裁 江利川毅氏

  『霞ヶ関(政と官)のよもやま話』

江利川氏は国の重要ポストを三度努め、国の行政に広く関わっている方で です。今回、氏の多くの知見の中から、貴重な内容のご講演を頂きました。

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5、総括発言 埼玉医科大学名誉教授 尾本良三先生

尾本先生は心臓外科医として有名な方ですが、総合外科医の元祖とも言え るスーパードクターであります。先生よりは、「素晴らしい講演会であった」とのお褒めの言葉を頂きました。

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~懇親会~

本強矢先生のご協力により、高級フランスワインをご準備頂き、『秩父ワイン会』が行われました。

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秩父屋台ばやしの演奏とワインが場を和ませ、あちこちで笑いと楽しそうな会話が生まれていました。多くの方が本当の懇親が出来たのではと、企画運営した我々も満足しています。

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大雪の影響

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2月14日から降り始めた雪は経験したことのないものでした。北国や雪山ではいっぺんに1m以上降ることも珍しくはありませんが、秩父でこんなに降ったことはありません。しかも、おも~い雪が1日で1m以上積りました。私は学生時代、山岳部、スキー部でありましたので、ヘリポートの横のお社、移植した梅の木が心配で、雪落としのために雪の中に踏み込みましたが、わずか20mの場所に行き着くのに、30分かかりました。ラッセルした深雪の底は青くすんでとてもきれいでした。

DSC02827@.JPGしかし、そんなのんきなことを言っていられない状況でした。普段の環境がいかに恵まれていたかが良く分かりました。

DSC02817.JPG救急車は病院まで辿り着けず、1km程そりでの患者搬送でした。

DSC02820.JPG患者の給食食材の配送が来なくなり調達に出かけました。

給食は給食スタッフのお蔭で、通常通り何事もないように提供されました。

病院スタッフは遠いものでは、長瀞、小鹿野より雪の中を5時間もかけて徒歩で病院に来てくれました。驚きを通り越し、感激しました。当院のスタッフは正に医療職のプロと言っていいと誇りにおもいました。

DSC02748.JPGDSC02727.JPG防災ヘリの着陸要請もあり、急遽、総出でヘリポートを除雪しました。大変なエネルギーでした。今、除雪機を一台発注しました。届くのが楽しみです。

DSC02863.JPGDSC02878.JPG病院はどんな時でも平常通り続けることが大切です。今回も3年前の大震災の時と同様に、どうにかそれを維持できました。孤立状態になった時こそ役に立つヘリポートもいつでも準備OKです。

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1年の締め括りに・・・

12月30日 餅つきをしました。職員の昼食には、収穫したばかりの赤蕎麦のもり蕎麦と、つきたてのお餅を出すことが出来ました。皆さんご苦労さんでした。

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旧秩父病院への想い

早いもので、当院が宮側町からこの場所に移転してより2年9か月となる。熟慮の末、旧病院の建物は解体することにした。様々な思い出が詰まった病院の解体は未練もあり、寂しいことではあるが、空き家となった病院をただ見ていることも忍びないことである。

せめて、恐らく100年以上の間、秩父病院を見守って来たであろう木々だけは生き続けてもらいたいと思った。私が子供の頃はもっと大きかった木蓮、その頃も今と変わらない老木であった、皮だけで立っている梅の木。それと長女の誕生記念に植えた桜の木や中庭にあった木々。これらを12月の初旬に和泉町の新しい病院の敷地内に移植した。新しい地に根ざしてほしいと願っている。

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研修医の学会発表・論文

2013年11月16日(土曜日)に埼玉県県民健康センター行われた埼玉県外科集団会に日本医科大学付属病院より当院に地域医療研修できている初期研修医の田邉智英先生が学会発表を行いました。

演題は『当院にて経験した異所性子宮内膜症の2例』で司会者よりの質問にも適確に答え、「外科医として常に念頭に入れなければならない、貴重な症例提示」とのコメントを頂きました。

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 今年2月14日(日曜日)に行われた埼玉県医学会総会にて、日本医科大学付属病院の初期研修医の青山純一先生と埼玉医科大学病院の初期研修医の平田優介先生が発表した2演題が論文として埼玉県医学会誌に掲載された。それぞれ『画像診断にてfree airを認めた腸管嚢胞性気腫の2症例』『地域における高次救急施設での加療を要する重症患者への対応の実情』である。いずれも初期研修医の域を超えた立派な論文と思う。現在はそれぞれの大学で研鑽中の彼らに別刷を送付した。彼らが成長して行く上で、大きな財産と成って行くことを期待したい。

*論文はPDFにて閲覧できます。


埼玉県外科医会誌に下記タイトルを投稿しました

地域医療を支えるための当院の取り組み

多少おこがましいタイトルではあるが、『地域の患者さんが地域で十分な医療を受けられること』が私の願いである。残念ながら、いまだこの達成には程遠い状況ではあり、今後も見果てぬ夢となりそうであるが、少なくともこれらを意識し40年以上地域医療に没頭してきた。心筋梗塞や脳卒中は別として、消化器疾患の分野においては、多少とも地域外科医療を支えるための役割を果たしてきたと自負している。

来年の第114回日本外科学会定期学術集会のメインテーマは『地域医療と高度医療の連携』とのことで、当院は、地域医療関連セッション2 『地域外科医療を支えるための工夫』(公募・一部指定)に『地域外科医療を支えるための当院の取り組み』と言う演題を応募した。公募の趣旨は以下のようなものである。

(近年、一般外科医の減少が指摘され、特に地域医療崩壊が叫ばれる厳しい状況のなか、地方においても中央と遜色のない再先端の医療レベルを確保し、維持するために、様々な工夫が行われています。学生や若手医師の視線で魅力的な地域外科医療とは? 少ないスタッフで地域格差をなくすには? 手術症例の集約化は是か非か? 大学病院とは異なる、地域外科医医療を支えるための戦略と工夫を広く募集します)

当院の演題抄録の要旨を紹介する。

(近年の医学の進歩は著しく、より特化した知識と技術を備えた専門医が重要視されてきた。しかし、一方で、より広い領域に対処できる総合医の必要性も叫ばれている。当地域には大学病院のような全ての専門科がそろった総合病院はないが、地理的にも、生活・文化圏的にみても、可能な限り自院、あるいは地域内で対応する必要がある。高齢化は深刻であり、総合的診療能力と包括ケアのマネイジメント能力を持った臨床医の必要性も迫られている。このことは同時に、当地域がこのような臨床医の育成に適しているとも言える。地域外科医療を支えるためには、まず医師の確保である。当院で研修した初期研修医に行った今後の研修病院を選ぶ根拠に関するアンケートでは、第1に指導医がいること、以下、各種専門医の受験資格が取れること、症例数が多いこと、医療の進歩に遅れないこと等であった。これらを踏まえ、若い医師達に選ばれる病院を目指し、各種専門医取得を視野に入れた後期研修プログラムを作成した。昨秋にはプライマリ・ケア連合学会認定後期研修プログラムも認可された。中央と遜色のない医療レベルの確保のため、大学との人事交流を積極的に行うことも重視している。地域医療機関と高度医療機関、お互いが習得不可能な分野を補填し合う連携が必要である。当院では、いわゆるアッペ・ヘモ・ヘルニアや、穿孔等の緊急手術、消化器癌開腹手術等を若い外科医に経験してもらうと同時に、高度医療機関で行っている腹腔鏡手術等も積極的に取り入れている。また、開放病床の提供とオープンシステムを実践し、地域診療所の整形外科、脳外科等の専門医の協力を得て、教育および地域の医療レベルの確保に努めている)

外科に限らず、地域医療を支えるためにもっとも重要なことは医師と医療の質の確保であると承知している。このために、私どもに出来うる具体的な方法を整理してみた。外科医会誌で紹介させていただき、果たして日本外科学会に採用されるか分からないが、これらを基本として発表演題を完成させて行きたいと思う。

1、       医師の確保 : 若い医師達から選ばれる病院となるために

①    各種専門医取得を視野に入れた後期研修プログラムの作成

②    先進医療への取り組み (腹腔鏡下手術、内視鏡手技等)

③    一般外科医として多くの症例を研鑽できることをアピール

④    初期研修医の積極的受け入れと指導。(現在、埼玉医大・日本医大系列7病院の研修協力施設となっている) 研修医の積極的な学会発表の実践

⑤    大学病院よりの若手医師の派遣要請と派遣医師への指導

⑥    子育て中の女性医師の受け入れとブランクのある医師への支援、雇用

⑦    専門医、指導医の招聘、雇用

⑧    地元出身医師の積極的招聘、雇用

⑨    広報活動 広報誌(ちちぶ病院だより)・ホームページの作成

2、       医療レベルの確保

①    大学との人事交流(大学の専門医による専門外来の開設・腫瘍内科、乳腺外科、形成外科等。大学指導医による当院への出張指導等)

②    開放病床とオープンシステムの実践(地域診療所の整形外科・脳外科等の専門医による手術等)

③    医療の進歩に遅れないための技術、手術の導入

(1985年低位前方切除術、1990年胃切除後再建に器械吻合導入。1992年腹腔鏡下胆のう切除術。今年より腹腔鏡下胃切除術、早期胃がんに対するESDを開始)

④    常勤外科医のレベルアップ(専門医取得・学会活動を含む)

⑤    個々の医師の守備範囲の拡大(一般外科医あるいは総合外科医としての研鑽)

⑥    地域診療所専門医による各専門外来診療

⑦    月1回の医師会症例検討会への積極的参加

⑧    学会への積極的参加・論文発表等の学会活動

⑨    月1回開催の医師会外科医会での勉強会・講演会での研鑽

⑩    地域他病院外科医師への手術指導(院内および出張指導)

⑪    出来うる限りの学会認定修練施設の取得(日本外科学会・日本消化器外科学会・日本消化器内視鏡学会・日本プライマリ・ケア連合学会等)

 以上を分析すると「医師の養成・確保」「学会発表、地域症例検討会を初めとする学術活動」「新しい医療の導入」「医療連携」が地域医療を支える基本と考えられる。この内、『医師の養成』につき、私の考えを独断と偏見は承知の上で述べたいと思う。

『地域に役に立つ医師、求められる医師の育成』が最近の私の夢である。

最近、特に力を入れていることに初期研修医の教育がある。現在埼玉医科大学系列および日本医科大学系列の計7病院より2年目の初期研修医が当院に地域医療研修に来ている。この1年間の当院からの研修医の学会発表は5回を数えた。彼らがいると私のみならず病院スタッフ全体が活性化されると同時に、彼らに何かを伝えたいと思いが募るのである。これは、単に年寄医者のエゴばかりではない。地域医療の現場から眺める最近の医療の現状が、あまりにも偏った歪な型となってしまっており、何かを言わなければ、何かを伝えなければ大変なことになるという焦燥から来るものと感じている。地域医療の現場でこそ伝えることができるものがある。また、彼らから教わるもの、彼らとの触れ合いで気づかされることも数多くある。

 専門バカでなく、視野の広い医者・総合医を地域で育てたいと思う。

一口に総合医といっても様々な言い方、捉え方がある。家庭医、プライマリ・ケア医、救急医、総合診療医、総合内科医等である。私は総合医というからには、内科・外科系に限るものではなく、急性・慢性、あるいは初期医療やトリアージに限定すべきものとは思わない。厚労省は専門医制度改革に着手している。数年後には基本領域に内科、外科等と並列して『総合診療科』が加わるという。この総合診療科の目指すところ、すなわち国が養成しようとしている総合医は、在宅医療を担うための専門医と思われる。病院から在宅へ、治す医療から支える医療へ、地域で、多職種で患者と家族を支える包括ケア。そのリーダーシップをとる医者、マネイジメントの出来る医師の養成である。確かに必要なことと思うが、私には今一つピンとこない。

私の考えている総合医のイメージはかなり違う。簡単に言えば、『その地域に役に立つ医者』のことである。離島ならば、あのコトー先生が理想であり、秩父ならば、逆説的だが、専門バカでない医者であろう。私は当院に研修にくる初期研修医達にいつもこう言っている。彼らの多くはまだ何科に進むか決めてない者も多い。だから「まず、内科認定医か外科専門医を取ること。出来ればその両方。それから各専門医の道を進めば良い。時間はたっぷりあるよ。だって医者は一生の仕事だから」しかし、いまだ外科と内科の両方を目指すという私のアドバイスを実行した人はいないようである。若い時は気がはやるし、性格の向き不向きがあるから仕方がない。自分も早く一人前になりたいと思ったので、卒業後すぐに外科に入局したので気持は良くわかる。だからこれは医者を四十年余りやって来たからこそ思う、臨床医の一つの理想像と思っている。ただ、私の思い描く総合医とはそんなに難しいものではなく、もっとシンプル、昔ながらの『お医者さん』の姿である。頭痛は脳外科・神経内科、肺炎は呼吸器、高血圧は循環器、外科にしても総て臓器別各科へ紹介。子供のヘルニアやアッペは小児外科がやるべきもの、あげくは大学病院でさえ麻酔医がいなくて手術が出来ない、小児外科医がいなくなったから、子供のアッペやヘルニアが出来ないとなる。なんでこんなに面倒くさくなったのだろう。私の言うことは間違っているのであろうか。古いのであろうか。なるほど、私は今になって親父の背中を追いかけているのかも知れない。

平成26年3月8日 埼玉県外科医会学術講演会が開催される。秩父外科医会が担当であり、テーマを『地域医療における外科医と総合医』とした。日本外科学会のメインテーマも『地域医療と高度医療の連携』であり、日本外科学会が地域医療に目を向けてくれたことは、地域医療に従事している者として喜ばしいことである。できれば、単に紹介・逆紹介等の連携に留まらず様々な問題についての議論を期待したい。例えば、厚生労働省の医療費削減路線である効率化、役割分担という体の好い言葉に隠れ、彼らの言う医療供給体制の見直しに内蔵されている、地方医療切り捨てについて。あるいは私には学会の権威主義の表れでもあると思われる手術や高度医療の集約化等、その是非を真剣に議論する場となれば有り難いと思っている。地域医療と高度医療・日本の医療の正しい在り方、さらには専門医と総合医について、喫緊に議論、検討すべきというメッセージと捉えたいと思う。

過日、私は来年春の日本外科学会定期学術集会会頭の上本伸二先生に手紙をかいた。その理由は、現在検討されている新専門医制度のなかで、新たに基本領域として新設されるであろう、総合診療科(仮称)についてお願いしたいことがあったからである。総合医あるいは総合診療専門医がどういう医師像であるべきかは、多くの見解があり、今後十分な議論がなされるべきと思われるが、この研修プログラムの内容は内科、小児科、救急が必須であり、外科が必須となっていないことに違和感を持った。そこで、私は内科と同程度に一般外科の基礎があってこその総合医であると思うという私の考えを会頭にお伝えし、ご理解を賜りたく思った。そして日本外科学会がプログラムの作成に関与して頂きたいとお願いしたのである。光栄にも上本先生より、ご理解と前向な返信を頂いた。光栄に思っている。

私は医療が抱える臨床、教育、研究分野の中で、人を癒すという大きな意味において、地域の臨床医療が大学病院等の医療に必ずしも劣っているとは思っていない。また若い医師の教育や自己研鑽においても同様である。もちろんどちらが良いと競うべきものではないが、若い医師が成熟していく上で、地域医療の現場でこそ磨ける分野は大きく、地域医療と高度医療の現場がお互いを補填し合うべきものと考えている。

また、特殊な高度医療を除き、急速な医療の進歩の恩恵は特定の医療機関や地域、あるいは選ばれた患者のみが受けるべきではない。日本の医療全体の底上げこそ必要であり、患者および家族の立場に立った全人的、社会的、文化的な要素をも含有した医療がなされるべきである。さらに極端な専門志向の反省、あるいは総合医や一般外科医についての活発な議論が行われることを期待したい。


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プロフィール
秩父病院理事長 花輪 峰夫

秩父病院理事長 花輪 峰夫

人と人との触れ合い医療を実践し、患者さんから信頼され、スタッフが気概を持って、地域に貢献できる病院を目指します。

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