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花輪理事長の独り言

花輪の独り言・第一報

令和4年(2022年)4月1日(エイプリルフール)、東海道五十三次徒歩一人旅に出かけました。

50年以上やってきた医者。私は今までに、60歳、65歳、70歳になった時、周囲に医者を辞める、辞めると言い続けて来ました。東京オリンピックの開催が決定した時、今度こそと思い『東京オリンピックが終わったら医者を辞める』とスタッフ達に広言しました。オリンピックはコロナで1年延期となり、加えてコロナ対策のため、私の辞任も伸びました。

それでも外科医の仕事、特に手術への執着は簡単には振り払えずにいました。今まで、手術のない自分は考えられませんでした。勿論、手術は今でも十分にできます。しかし、一方で、術後の患者さんの容態に自分の気持ちが100%左右されることに耐える気力は失せつつありました。精神的に臨床外科医としての限界を感じて来ていました。余力のあるうちに次の何かを見つけたいとも思いました。なんでも良い、私には区切りが必要と思いました。そして自分の今の体力を知る何かに挑戦してみたいと考えました。

そして、昔の人が普通に歩いた道を歩くことにしました。

仕事からの解放と未練の狭間で、自分では『医者の卒業旅行』かつ『次の生き方を探る旅』と位置づけ東海道を歩くことにしました。

多少の準備として自転車での札所巡り、病院への徒歩通勤、メディカルフィットネスでの訓練をやりましたが、1日せいぜい15キロがやっとでした。ダメならすぐ止めることも考え、エイプリルフールの出発としました。私に取って、リスクという点では山や海・空から比べれば問題ないことです。

4月1日 東京に住む長女と孫、犬のポンタに見送られ、日本橋を出発しました。

この時はダウンジャケットの上に雨合羽上下の出で立ちでした。悪戦苦闘、辛くも面白い、我慢、我慢の旅でした。初めて体験、コロナの災い、腹の立つこと、戸惑うこと、嬉しかったこと、勉強になったこと、自分を含めバカじゃないかと思ったこと、磯部餅と甘酒がこんなにうまかったことに気づいたこと、雨の中ただ黙々と歩きゾーン(ある世界)に入りそうになり、顔の雫が涙か雨か?分からなくなったこと、外科医としてウクライナまたはモスクワに行こうと思ったこと。

結局28日間、2日は停滞したので、26日で637キロ、1日平均24、5キロ歩きました。

この経過はフェイスブックに逐一アップしました。驚くほど多くの人たちが見てくれていて、声援を送ってくれました。(詳細はFBをご覧ください)

途中棄権はあり得ませんでした。意地というと少し違うが、『昔の人は草鞋で歩いたのに』が常に頭の中にありました。しかも、もっと早く。東海道、2週間で歩いたそうです。(こんなに多くの人達に声援されては、途中棄権を出来るはずはありません)

京都三条大橋に着いた時、特別な感情・感慨は全くなし。不思議です。

今後の人生の生き方全く見えず。これも残念でした。

京都でゆっくりなんて言う感覚は全く浮かばず、修学旅行の中学生で賑わう中、タクシーを止め、一目散で京都駅、新幹線は東京駅までなんと2時間14分、味も素っ気もなし。

秩父に帰り10日間位は温泉、マッサージ等で休養、その後、1週間のシングルハンドヨットクルーズと釣り、こんなにゆったりしたことはなかった。

その後、朝起きて、なにもやらなくて良いことに『なんて良いもんだ』と感じました。釣ってきた魚をさばいたり、孫のピアノ発表会を見に行ったり、ドリカムのミューズパークのコンサートを歩いて下見したり。

しばらくすると、何かにつけ、やたらと腹が立つようになりました。やることがないのには参りました。腰が痛いのに、遠くまでわざわざ歩いたり、皆野の温泉まで歩いたり。

朝起きて、犬の散歩以外にやることがないのは、苦痛でしかなくなりました。

この旅の最中には全く気付かなかったことが、今はっきりと分かって来ました。私には以前のような体力はもうありませんが、『頑張ること、我慢すること』はまだ出来ることが分かりました。一歩でも前に進めば、必ず目的の宿に付くことも改めて体験しました。予定がないこと、目的・目標がないことは苦しい。これがないと、多分、生きて行けないと思うようになりました。

振り返って、どんなにマメが痛くても、どんなにふくらはぎが痛くても、明日は前に進み、遅くても歩き、目的地まで辿り着くという目標がある旅は充実していたと、あの旅、あの、ただただ歩いていた時間が懐かしい、恋しいと思うようになりました。

この旅を経験し、私自身が見えたことが、最高の収穫でありました。

私にはまだやらなければならないことが沢山あるようです。今後は、多少は残っているエネルギーを、手術や診療の代わりに『秩父地域の進行がん撲滅・健康寿命の延長・地域を担う若手医師の確保と教育』のシステム作りに半分くらい、残りは『自然との戯れ』に使いたいと思っています。 (*手術はやります、まだ外科医ですから)

 

次回からは、これからの私の取り組み・システム作りの「独り言」をつぶやきます。

 

 


院長ブログ・最終

私、花輪峰夫は2022年3月をもって秩父病院院長を退任いたしました。半世紀にわたり、臨床外科医・救急医として、秩父地域の医療に誠心誠意取り組んでしてまいりました。

この間、様々な方々にご支援頂いたことに心より感謝申し上げます。

当院の職員より心に響く言葉とプレゼントを頂きました。最高のスタッフに支えられ、今あることを感謝しています。

今後しばらくは理事長として病院運営に専念しますが、後進への指導は引き続き行ってまいる所存です。

秩父病院は、坂井新院長以下、全スタッフが『秩父地域の医療を担う』と言う気概をもってさらに努力してまいりますので、引き続きご支援の程、宜しくお願い申し上げます。

次回からは、このコーナーは『花輪の独り言』といたします。

 


新型コロナウイルス感染・第20報(2022年2月14日) 

 

  • 当院職員へのワクチン接種後の抗体検査について(2報歯科部長:長谷川 義朗

当院では2021年3月から1回目の新型コロナウイルスワクチンの医療従事者の先行接種を開始しました。2022年1月までに3回目のワクチン接種を終了しました。ワクチン接種を行うと同時に職員の抗体価を測定しています〔協力 (株)秩父臨床医学研究所 検査方法: CLIA法・ロシュ社・SARS-CoV-2抗体(S)IgG定量・判定基準50.0未満 (AU/ml) 〕。

1回目の測定は2回目のワクチン接種から9〜10週間後、2回目の測定は2回目のワクチン接種から22〜24週間後、3回目の測定は2回目のワクチン接種から33〜34週間後、4回目の測定は3回目のワクチン接種から4〜5週間後に行いました。

結果を図1に示します。

 

グラフは各年齢層(20〜29歳、30〜39歳、40〜49歳、50〜59歳、60歳以上)に分けてそれぞれの平均値をグラフにしています。対象は70名で未感染の職員です。

2回目の接種後から時間が経過するにつれ抗体価は減少しました。各年齢層で差はありますが3回目の測定の結果は1回目の測定の結果の10%〜30%まで減少しました。しかしながら3回目のワクチン接種後は1回目の測定結果の200%〜500%と大きく上回りました。これはいわゆるブースター効果と考えられます。

60歳以上の層では他の年齢層と比較して抗体価の平均値は低値を示しまた。また、全年齢層で抗体価の個人差は大きく出ました。20代でも抗体価が低い人、高齢でも抗体価が高い人それぞれいました。

昨年8月に当院の病棟でクラスターが発生しました。残念ながら職員数名が感染してしまいました。しかしながら2回目のワクチン接種を終えていたので症状は軽症でした。抗体カクテル療法を行い、入院治療することなく治癒しました。この時期はワクチン2回目の接種から18週間ほど経過した時で2回目の抗体価の測定を行う前です。抗体価はそれなりに低下し始めている頃だと思われますが、軽症で済んだ要因の一つがワクチン接種による抗体の獲得であると考えられます。

今後考えられることは、ワクチン接種を終えていれば重症化はまぬがれるということと、多くの人がワクチン接種で抗体を獲得すれば、集団免疫が獲得でき、結果としてコロナ感染者が減少するだろうということです。3回目のワクチン接種後の抗体価の上昇は大きいです。 いち早く多くの方々へ接種が進むよう努力いたします。

(文責 院長 花輪峰夫)

 

  • 今年(2022年)に入ってからのオミクロン株感染患者治療の経験と印象
  • 感染者の急増の割には、感染者の入院が少ない
  • 入院患者は、ほとんどが超高齢者か重篤な基礎疾患を持つ方
  • 感染しても軽症、無症状の方がほとんどである。オミクロン株でもコロナ肺炎像を呈した症例が3例あった。この内2例はワクチン未接種、1例はワクチン1回接種であった
  • 入院患者は老人施設からの方が大半であり、介護度は高く、看護・介護は以前とは比べものにならない程大変である。
  • 診察あるいは入院時、治療薬投与の時間的条件(発症後5日以内)を過ぎている方が大半であり、自宅療養中の詳細な観察が重要であり、治療薬が宝の持ち腐れにならない対策が必要である
  • 老人施設等でクラスターが発生した場合、感染者はできるだけ初期に治療薬の投与が必要と思われる。この場合、経口薬は無理な場合も多く、注射薬(ソトロビマブ等)の投与が有効であろうと思われる。そのためには、施設や嘱託医、診療所、コロナ治療医療機関の連携が急務と考える

 

オミクロン株感染についての感想・考察

総じて、重症化する方は少ない。軽症、無症状の方がほとんどである。従って、実際の感染者は発表されている数を大幅に上回っていると考えられる。最近では、発熱外来での抗原・PCR検査の陽性者が半数近くに上る日もある。感染者の入院患者数は感染者数に比例する程は増えていないことは、オミクロン感染は重症化することが少ないことを裏付けている。

報道は、重症化・死亡に至る方が増えていると危機感をあおるが、私にはそれらが極端に多くなっているとは思えない。高齢者が感染すれば若者より重症化リスクが増すことは当然であり、基礎疾患が悪化しても全く不思議ではない。高齢そのものがリスクであると言って良い。死に至る方は超高齢者か、又はかなり重篤な基礎疾患を持つ方が大半と推察する。医者が言ってはいけないことかも知れないが、人は歳を重ねれば必ず死ぬのである。オミクロン株に変わった現在、高齢のコロナ感染者の死は、多くの場合コロナ感染が直接の原因ではないと思っている。様々な意見があろうが、『コロナは怖くない、さらに、オミクロンの感染力は強力であるが、重症化はせず。重症感染症とは言えない。さらに、今までのワクチン接種の効果もあり、感染しても大事には至らない。従ってオミコロンは怖くない』が肌で感じている私の実感である。癌、脳卒中、心臓病、重症外傷と比べれば、何をそれ以上に恐れることがあろうか。

 

3回目の追加接種

当院職員の内、ワクチン3回目接種後に感染した職員が3人いる(いずれも院内感染ではない)この内2人は無症状、1人は軽症~中等症であった。家族感染であった事例では、3人の幼児は当然ワクチン未接種であったが、微熱、鼻水等風症状のみ・。配偶者は2回接種後で当院職員は3回接種後であった。症状は配偶者により強く発現したと言う。

ワクチン3回目の追加接種の効果はどれ程のものかは現時点では不明であるが、冒頭の如く、3回目の追加接種後の抗体価の上昇具合から推察すると、大いにその効果、特に重症化阻止効果に期待できると思われる。

昨年の第5派が収まった、10・11・12月になぜ早く準備し、より早い追加接種が出来なかったのか悔やまれてならない。当初言われていた、2回目接種よりの8ヶ月接種間隔としたのは、ワクチンが手に入らなかったためなのか?今となっては3ヶ月未満でも良いのではないか?サンプルでも継時的に抗体価測定を行う必要があったのではないか?接種券に縛られていたのではないか?医師や看護師等の接種スタッフの確保の問題か?不満と疑念は残る。昨年来の反省が生かされていない、全く進歩していないと思う。

 

今、やるべきこと

私は日本が取ってきた今までのコロナ対策の全てが間違いであったとは決して思わない。むしろ、総じて良くやって来たと思っている。しかし、3回目の追加接種が著しく遅れていることは事実、すでに第6派には手遅れである。水際対策は追加接種が行き渡るまでの時間稼ぎ、は理解できた。しかし、思惑通りに行かなかった現状を真摯に見つめるべきである。次の変異株の流行に向けて追加接種は必要との、言い訳じみた意見も多少は理解できるが、追加接種率が低いとの理由で様々な規制を解除しないことは誤りであると思う。状況は刻々と変わっているのである。経済は低迷し、社会と人の心は今や鬱の世界に入り込んだ。しかし『元々怖くなかったコロナウイルス自体もさらにマイルドなオミクロン株に変わった』のである。

『今や、コロナ感染症はインフルエンザと同等の対処をすべき』と考える。

高齢者に対する感染防止措置は重要であるが、規制の強化、蔓延防止措置の拡大・延長は今となっては大きな意味を持たないと考える。

救急車の受け入れ困難事例は今最大の問題となっているが、その原因は、コロナ感染者の入院病床確保のために病床が無い、あるいは病院スタッフが感染または濃厚接触者となり勤務できず、病院の本来の機能が維持できなくなっていると聞く。私は、秩父地域ではそこまでの状況との認識はないが、コロナ以外の急性重症患者が満足な治療を受けられず、不幸な結果となることは当然あり得ることである。当院の実際を見ても、発熱外来を含むコロナ感染者の診断・見分け検査のため、一般外来機能は大きく制限されている。入院治療についても、感染患者の隔離や特別な感染予防対策が必須であり、通常の入院治療、手術日程等にも少なからず影響を及ぼしている。また、がん検診や人間ドッグ等についても検査を控える傾向があり、早期発見・早期治療の原則が脅かされている。この原因の多くが、国や行政の柔軟性を欠いた根本的対策、実行の遅さ、優柔不断にあることは間違いない。医療逼迫も社会不安もこれら失策が作り出したものと思えてならない。

私は、今の世間の空気感・風潮は是非とも変えなければならないと思う。規制・自粛の時期は過ぎたと感じる。今は国民に夢と希望を与える時である。重ねて言うが、以前は有効であった、脅かしによる自粛と規制強化による感染予防、この「プロパガンダ」とも言うべき施策は、今は意味を持たないと考える。

『ワクチン接種と自然感染による集団免疫の獲得』に舵を切る時である。残念ながらそうせざるを得ない状況に陥ったとも言えるが、それでなければ我々の心は萎縮し希望を失い、日本は世界から取り残されてしまうであろう。

登山でも航海でも、決断できないことは遭難に繋がる。

コロナに関わっている医療者として、敢えて両方向(規制か緩和)のリスクは承知で、医療専門家と称する人達や政治家が発言しないであろうことを訴えたい。正に決断の時『潮時』である。今は、次への準備をしつつ、『マイルドオミクロン株』に賭けるしかない。


新型コロナウィルス感染・第19報(2021年12月1日)

中間総括

秩父地域における新規感染者はこの約3か月間は報告されていません。日本全体でも急激に減少しており、今のところ低水準で落ち着いています。一方、世界に目を向ければ、全く感染が収まる気配はありません。さらに、昨日(2021年11月30日)、変異株・オミクロンによる感染者が日本でも確認されました。今、このウイルスに対し、警戒感が広がっています。私は11月30日に秩父郡市医師会誌に「秩父病院のコロナとの戦い」というタイトルで寄稿しました。現状のコロナ禍の状況は刻々と変化しますので、今の私の考えも医師会誌に書いた文章の内容も、明日には変わって行くかも知れません。そんな訳で、2021年12月1日の時点でのコロナの状況を、中間総括として記録に残すべく、医師会誌に書いたデータを抜粋して、ブログにアップすることにしました。

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1,  PCR検査・抗原検査(表1、2021年11月6日現在のデータ)

当院における新型コロナウイルスに対する検査の種類、受診のタイプは様々である。

外来でのPCR検査は延べ3855回行ったが、陽性者は157人(陽性率4,1%)であった。内訳は別表1の通り、濃厚接触者は74人、(陽性率9、1%、)、次いで当院発熱外来79人、(陽性率5,6%)と高い。県よりの委託の発熱外来・PCRセンターは4人(1,9%)、入院前検査は0人であった。2021年11月6日現在の秩父地域の感染者589人の内157人(約26%)を当院で診断したことになる。

 

2、ワクチン接種(表1)

別表1の如く、接種総人数は8245人・16488回である(2人は1回のみ)

表1の如く、様々な接種方法、内容でワクチン接種を行った。

最初は医療従事者への接種であった。当院は、今年の1月に、埼玉県から秩父地域のワクチン接種協力病院(A病院)に指定され、医師会員等、医療従事者への接種と各病院へのワクチン配布を依頼された。

私は国の指示したワクチン接種の順番、諸外国でもそうだが、最初に医療従事者から行ったことはしごく当然、重要な意味があると考える。なぜなら

○      医療従事者は感染者に接触する機会が多く、感染リスクが高い

○      医療従事者が感染しないことは少しでも医療崩壊を防ぐことになる

○      医療従事者は一般人と比べ、ワクチンの効果やリスクを理解でき、自身の接種に適切な選択が可能であり

○      医療者が率先して接種することは、ワクチン接種自体に弾みがつき、全体の接種率の向上に繋がる

○      言葉は悪いが、実験台としての役割と考えるからである。

メッセンジャーRNAという初めてのワクチンであり、実験台も含め、私は一人の医療者としてこれらは十分に理解できた。

仮に、医療従事者が30パーセントしかやらなかったら、一般の人はほとんど接種しなかったであろう。その結果、接種率とワクチンの効果は格段に落ちたに違いない。

しかし、最も大事な意味は「我々医療従事者がコロナと戦うための鎧を早く身につけるため」であろう。

●副反応(2021年11月6日現在)

以下に当院での1回及び2回接種を合わせ16488回・8245人のワクチン接種後(全例ファイザー)の副反応等のデータと対処法につい紹介する。

対象16488回の被接種者の概ね6割は65歳以上の高齢者であり、内約7割は80歳以上の超高齢者であった。

観察中の副反応

①      接種後の観察時間中に、何らかの症状の訴えがあった件数は57件(0.35%)

②      そのうち明らかに副反応と考えられた件数は10件(0.06%)

③      内1例をアナフラキシーと診断 (0.006%)*ショックではない

④      予診票および問診の結果で、接種を中止した症例は3件(0.018%)

⑤      接種前に被接種者から直接当院へ電話等でアレルギーおよびアナフラキシーの既往の申告があった症例は35例(予診票のアレルギーのチェック、花粉症等は除く)

⑥      内訳は蜂刺され15例、薬剤(造影剤を含む)10例、食材5例、不明4例

⑦      蜂刺され症例の内1例はアナフラキシーショックで当院に緊急搬送の既往があった。たこの症例を含め、2例がエピペンを携帯している

⑧      特記すべきことは、申告のあった35全例に接種を行なったが、初回・2回目接種後、観察時間内に副反応は発症しなかった

*私は救急外科医・麻酔医であり、ショックの対処はスタッフも得意分野である。従って、当院はアレルギーの既往を訴えた被接種者を積極的に受け入れた

  *アナフラキシーを発症した2例は抗ヒスタミン、ステロイドで軽快した

*1回目の接種後にアナフラキシーを発症した1症例に接種前に抗ヒスタミン剤を点滴静した後に2回目の接種を行なったが、副反応は出現しなかった

 

接種翌日以降の副反応

当院の職員及び関係者、約150人(300回)に行った接種(ファイザー)の翌日以降に発症した副反応は、接種部の筋肉痛、発熱、頭痛、倦怠感が主なもので、一般に言われている症状と大差はなく、重篤な副反応はなかった。

*新型コロナワクチン接種によるアナフラキシーショック死亡例は私の知る限りではない

*日本医療安全調査機構の「注射剤によるアナフラキシーに係る死亡例の分析」の提言の一行を紹介する

「薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の様態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフラキシーを疑い、アドレナリン0,3mg(成人)をためらわずに、大腿前外側部に筋肉注射する」

 

3、治療(表1)

2020年2月初旬より発熱外来を始め、その後、県よりの要請に答え、4月28に感染者専用病床を1床、5月7日の連休明けより3床、8月11日より5床、11月30日より7床、最終的に2021年2月13日より10床の感染病床を整備した。*県よりの指導により、2021年10月25日よりは感染者減少のため5床に、11月末より3床に減らしている。

当院は当初より以下の受け入れ条件を埼玉県に提示している。

  1. 公的病院が満床であること
  2. 秩父地域の感染者に限ること
  3. 中等症以下であること
  4. 重症化した場合には、埼玉県の責任において迅速に感染症専門施設へ転送すること

であったが、全てがそんな訳には行かなかった。

東京や県南地域と比べると、当初は秩父地域の感染者は少なく、当院の感染入院患者についても、第1波では入院は無く、2波の2020年7月に初めて3人の入院があった。その後しばらく無く、3波の11月に5人、12月に7人、2021年1月に14人、2月に7人、4波の5月に10人、5波の7月に10人、8月に19人、9月に5人、計80人である。幸い、2021年10月以降の感染者入院は無い。入院患者の内訳は秩父管内が59人、管外が21人であった。この内6人が重症化等で高次医療機関に転院となった。

 

●2021年9月より抗体カクテル療法を開始した(表1)

当院の少ない経験と多くの知見から、この療法は早期に行えば、重症化を防ぐことができると確信している。

4,抗体検査(表2 当院職員・抗体検査データ・グラフ)

秩父地域では2021年3月12日にワクチン接種が開始されましたが、当院では 職員のほぼ全員に、ワクチン接種前に抗体検査を実施しています。この結果、当然全員抗体は判定基準以下でした。これはその時点で感染者なしを意味すると思います。

 

当院におけるワクチン接種後の年齢別抗体価の変化

【試験対象】

当院職員のうち23歳から77歳までの男女(男性12名, 女性68名)の80名

(院内感染により抗体カクテル療法を受けた人は除く)

【計測方法】

C L I A法・ロシュ社・SARDS-CoV-2抗体(S)IgG定量 判定基準50.0未満(AU/mL)

(協力:秩父臨床医学研究所)

【結果と考察】

結果をグラフに示します。

①    接種後9〜10週後には全年齢層で抗体価の上昇が見られました。また40歳以上よりも23歳〜39歳までの年齢層で多く確認されました

②    全年齢層で接種後から34週までの間に経時的に抗体価は減少しました。

③    抗体価は個人差が大きく、若年層でも低い人、高齢層でも高い人がいました

④    抗体価の減少幅も個人差が大きいことがわかりました

年齢、個人により抗体価はさまざまです。一概に若いから、高齢だから、ということはありませんが全体的に若い年齢の方が抗体価は高い結果でした。しかしながら「抗体価が高い=感染しない」ということでは決してなく、感染する可能性はあります。

当院で発生した院内感染では職員2名が感染しました。当然この2名もワクチン接種が完了している人です。それぞれの抗体価は、1回目の計測が7699AU/mL, 2167AU/mL 、2回目の計測が2492AU/mL, 800AU/mL(*感染前)でした。院内感染した際、この2名に自覚症状はほとんどなく、二人は感染の初期段階で抗体カクテル療法を行いました。抗体カクテル療法が終了してから2週間後に測定した抗体価は108084AU/mL, 151119AU/mLと10万を超す極端な高値を示しました。また、抗体カクテル療法が終了してから10週間後に行った抗体価の結果は22742AU/mL, 54629AU/mLとやはり経時的に低下していますが、万単位の高価ではあります。

抗体価が感染予防・重症化を左右するとすれば、ワクチンの3回目の追加接種が必要であると考えられます。一方、抗体価が万単位を超える人にワクチン3回目の接種は必要か?

また、抗体の数値が低くても、抗体さえあれば、感染したとしても急激に抗体が増え、重症化しないであろうとの報告もあります。今後の研究成果が待たれるところです。


新型コロナウイルス感染・第18報(2021年10月1日)

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                2021年9月17日(金)毎日新聞朝刊から転載


新型コロナウイルス感染・第17報(2021年9月9日)

平常診療体制への復帰

8月17日最初の院内感染の確認以来、新規入院・予定手術等一部の診療体制を制限してまいりましたが、現在、院内感染は十分にコントロール下にあり、2021年9月8日から、平常の診療体制に復帰致しました。

今後も、引き続き、新型コロナ感染症の患者さんに付いての入院治療、ワクチン接種、濃厚接触者に対するPCR検査、発熱外来、PCRセンターとしての機能等を行ってまいります。

私の医師として生きた半世紀の中で「通常の診療・手術・検査が出来ること」がこんなに素晴らしい、有難いことであると初めて気付かされました。

出来るだけ早くコロナを収束させ、全精力を一般診療に注入できる日を念願しています。

ご迷惑、ご心配をお掛けしましたが、今後もより一層、感染防御体制を強化し、地域医療を行なってまいります。ご理解の程、宜しくお願い申し上げます。

 

 

『仮称・抗体カクテル療法センター立ち上げ』

この療法は最近大変有効であることが分かって来ました。まだ症例は少ないですが、当院での十数例の経験でも同様に有効性を確認しております。

現状での、この療法を行う条件ですが、外来での治療が可能となりました。ただし、投与後の副反応が発言した場合に備え、接種後24時間医療機関に連絡できる体制が確保され、状況により入院が可能であるとのことです。従って、実際には、新型コロナ感染症を受け入れている病院ということになります。

一方、医療逼迫・感染病床の不足に伴い、自宅療養中患者さんが増え続け、その中で重症化したり亡くなったりする事例が増えて来ています。

そこで当院では、自宅療養中の患者さんの内、適応基準を満たす患者さんに保健所や自宅療養協力医療機関と連携し「抗体カクテル療法」を行いたいと考えています。

 

当院の少ない経験と多くの知見から、この療法は早期に行えば、重症化を防ぐことができると確信しています。

今、この療法の適応基準や実施条件が定まっておりませんが、大変有効であることは間違い無く、当院でも適応症例があり次第、お引き受けし、治療を行うつもりです。

 


新型コロナウイルス感染・第16報(2021年9月4日)

院内感染

8月初旬頃より、埼玉県でも感染者の急増で、感染者の入院が難しくなり、同時に重傷病床も不足、当院でも重傷者に対し、人工呼吸器を使用しての治療を行なわざるを得ない状況もありました。一方で自宅療養者も急増しており、重症化した場合の対処の難しさ、救急車の受け入れ困難が現実のものとなって来ました。

 当院ではコロナ感染者専用病床を10床備えて感染者への治療を行っております。

こんな状況下で、痛恨の極みでありますが、8月17日に一般病棟の入院患者さんに初めてPCR検査陽性が判明、以来、8月24日の間に、計12名の患者さんと、病室担当職員2名(計14名)にPCR検査陽性が判明しました。感染した患者さんの大半はすぐに感染病床に移し、感染病床に収容できなかった患者さんは、特別個室感染病床を整備し、抗体カクテル療法等を行いました。その後は新規入院の中止、入院手術の中止等の対処、全入院患者さんと全職員に対する、最低2回/週のPCR検査の実施を続けました。新規感染患者さんの経過は良好です。その後、10日間感染者は出ませんでしたが、9月3日に陽性者が一人判明しました。

2名の職員は、二人ともワクチンを2回打っておりましたが、感染しました。すぐに抗体カクテル療法を行い2週間の自宅待機としましたが。二人ともほとんど症状は現れず、現場復帰しています。

今後は来週初めまで経過を見つつ、保健所・埼玉県のご助言を受け、当院の今後の診療体制を決定していくつもりです。

今回の反省から、予定入院・手術は原則ワクチン二回接種後の入院とし、当日の抗原・PCR検査の実施等を徹底するなど、院内感染防御態勢を今まで以上に強化するつもりです。

今回の苦い経験から、学んだ事があります。

①    ワクチンを2回接種していない方に感染者が多く見られたこと。

②    一方、ワクチンを2回接種していても感染することもあること。

③    しかし、ワクチンを2回接種していた人は、感染しても重症化しないこと。

④    抗体カクテル療法は大変有効であること。

許されるなら、出来る限り早期に、感染者の受け入れを再開し、加えて、医師会の先生方と協力し、自宅療養者への抗体カクテル療法の実施等、コロナ感染患者さんへの治療を継続して行きたいと考えています。

同時に、今までと同様に、一般患者さんへの入院治療・手術も行っていく所存です。

当然、若者へのワクチン接種、特に小学生のご家族、中学生とそのご家族への接種を早急に行いたいと考えています。

このことが当地域に於ける、秩父病院の使命と心得ております。

ご迷惑をおかけしておりますが、早く通常の診療、生活、社会が戻ることを願い、めげずに頑張りますので、何卒ご理解の程宜しくお願い申し上げます。

 


新型コロナウイルス感染・第15報(2021年8月18日予定であったが、本日9月4日アップ)

コロナ対策を振り返って感じた事

2020年2月より当地でも始まったコロナ禍は1年半を経過した現在、日本は第5波に見舞われ、感染者が大幅に増え、感染者の入院治療もままならず、自宅療養者が急増しています。

私は、2021年5月10日(第9報)のこのブログに

『コロナ禍は緊急事態を過ぎもはや地球規模の災害です。コロナとの戦争といっても良いでしょう。しかし、日本では臨戦態勢とは程遠い状態』と指摘しました。三度目のより広域の緊急事態宣言、蔓延防止法は発せられましたが、いまだ、政治家や行政の意識は変わっていない様です。この結果、国民の意識も大きく二つに分かれるように思います。「ただ怖がり自粛・自粛」と「無知・無関心・他人事」です。自由主義国家の日本では強制的な施策は出来ないことは喜ばしいことです。しかし、コロナとの戦争なのですから、国民の意識も変わらなければいけません。

最近、やっと、テレビ等の専門家やコメンテーター、政治家の言葉に「災害級」という表現が現れ、ついに今はコロナ禍の現状を「災害」「有事」と言い出しました。「やっとわかったか?」と私は思います。

私はそうなった原因を独断と偏見は承知で推測してみたいと思います。

1,国民、市民、医療従事者等すべての人の危機意識の欠如。

2,新型コロナウイルス感染症に対する、正確な認識の欠如

3,マスコミの市民の動揺をあおる報道・世界の正確な情報の欠如・情報量の偏り

4,無知と利己主義、他力本願

5,国家、地方行政システムの不備・対応の遅さ・縦割り・前例主義・リーダーの欠如

6,行政、医師会、保健所、現場医療機関等のコミュニケーションと協議の欠如

7,非常時(有事)ということを忘れた、度を過ぎた個人情報保護と自由という言葉の履き違え、おかしな平等意識

言い出せば切りがないので、より具体的な私が痛切に感じていることを列記します

①    私は、唯一ワクチン接種がコロナに対するきわめて有効な手段、つまり感染と重症化を防ぐ唯一の方法と考えています。しかし、マスコミは、副反応等のマイナス面を話題にし、接種を控える風潮を助長しているように思えてなりません。

②    若者にワクチン接種を希望しない人が多いことから、ワクチンの安全性のメリットを示し、逆に、感染後に後遺症が残るという脅かし、さらに、接種したら何かしらの、「ご褒美」を挙げるという。メリットと脅かしはまだ、良しとして、「ご褒美」は開いた口がふさがらない。これでは、日本人としての資質、品位が疑われる醜態である。「他人の為、家族の為、仲間の為にワクチンを打つのではないのか」情けない。

③    新型コロナ感染症の疾病としての怖さ

正直、まだ私にもわかりません。しかし、私どもが常日遭遇している疾患、がんや心筋梗塞、脳卒中等と比べると、命に直結するという意味ではそれ以上に恐ろしい病気とは思えません。

新型コロナウイルス感染症は早期に対処すればまず死ぬことは無いと思っています。

今のところ、決め手はワクチンしかないと考えています

 


新型コロナウイルス感染・第14報(2021年7月28日)

当院で行なった新型コロナウイルスワクチンの接種は、2021年7月28日現在、初回および2回目接種の合計が、11514回と1万件を超えました。

2021年6月6日に開始した、日曜日のドライブスルーによる3回の500人、4回の1000人接種、7月25日の500人接種が事故なく終了し、やや安堵しています。

今後も8月1日と8日の日曜日の500人(2回目)、および平日の接種を9月末まで予定しています。

ドライブスルーの1000人接種では梅雨、テントが飛ばされそうな強風と豪雨、猛暑と、毎回辛い状況がありました。予想外であったのは超高齢者の被接種者が自身で運転してくる方々が多く、常に事故の不安があり、私の気持ちは休まる暇はありませんでした。スタッフの内、二人が熱中症になりましたが大事に至らず。幸い車の事故もなく終わりました。昼のお弁当が唯一の楽しみでした。スタッフにこんなつらい仕事を強いて良かったか?『疲れた‼️、二度とやりたくない‼️』が今の心境です。皆も同じ思いでしょう。

一方、今日本の状況は私の予想通り、悪化の一途を辿っています。私には、この原因がオリンピック・パラリンピック開催とか、緊急事態宣言の発出の時期とか、規制・自粛の要請の程度とか、目に見える要因のみとは思えません。悪化とは単に感染者の急増ではありません。人々の心が沈んでいく、あるいは若者の無責任があるとしたら、それこそが悪化の重大な原因の一つです。今、経済か感染抑制か?などと言っている暇はありません。社会が崩壊してはなりません。『私には、新型コロナウイルス感染症が、社会を崩壊させる程の重篤な病気とは思えません』何かがおかしい。政府も専門家のコメントもマスコミも、もっと状況を正確に伝えるべきです。不安をばかりを煽ってはいけません。

死者は何歳なのですか?基礎疾患はあるのですか?癌やその他の疾患との死亡率の比較は? 自分で自分の首を絞めている風潮が、マイナス思考が、たまらなく嫌です。

ワクチン接種はあくまで希望者は、その通りです。初めて開発されたものですから当たり前でしょう。しかし、新型コロナが発症して、1年7ヶ月が経過し、第5波の真っ只中、何度目かの緊急事態宣言が発出されている現在、個々の被接種者の意識に対する社会的コメントは、何かおかしい。今、感染者の主体は若者です。彼らがワクチンを打たなければ決してコロナは収束に向かいません。そのため、彼らに脅かしと、彼ら自身のメリットを理解させて、ワクチンを接種させようとしています。これは根本的に間違いです。ズバリ言います『自分の事のみを考えないで、他人のこと、家族のこと、社会のことを考えて下さい、もっと現状を直視し、当たり前の危機感を持って下さい』

今年の2月に初めてワクチンが接種された頃とは違います。一部の基礎疾患のある人を除けば、『ワクチンの副反応が怖いので接種はしない』は、私には無知、無責任としか思えません。

 

 

以下に当院での11514回のワクチン接種(全例ファイザー)の副反応等のデータと一般の関連データを紹介します。

対象  11514回の被接種者の内訳 約9000回(78%)は65歳以上の高齢者であり、内約70%は80歳以上の超高齢者でありました。

1、 接種後の観察時間中に明らかに副反応と診断件数した症例は5件です。(第13報で報告済み、以後無し)   0.05%以下

2、 内1例をアナフィラキシーと診断(第13報に報告済み)  0.01%以下

3、 予診票および問診の結果で、接種を中止した症例は2件です。(第13報で報告済み、以後無し)   0.02%以下

4、 接種前に被接種者から直接当院へ電話等でアレルギーおよびアナフィラキシーの既往の申告があった症例は23例(予診票のアレルギーのチェックは除く)です。内訳は蜂刺されによるものが12例、薬剤9例、食材1例(エビ)、不明1例です。蜂刺され症例の内1例はアナフィラキシーショックで当院に緊急搬送の既往がありました。この症例を含め、2例がエピペンを携帯しているとのことです。申告のあった全例に接種を行いましたが、初回・2回目接種後、観察時間内に副反応は発症しませんでした

5、 接種(モデルナ)の翌日以降の副反応発症のデータは、7月26日に厚生労働省から1万人当たりの発症件数が発表されました。接種部の筋肉痛、発熱、頭痛、倦怠感が主なものです。2回目に多く認められたとのことです。

当院の職員及び関係者、約150人(300回)に行った接種(ファイザー)の翌日以降に発症した副反応は、上記の結果とほぼ同じでした

6、 新型コロナワクチン接種によるアナフィラキシーショック死亡例は私の知る限りではありません

7、 日本医療安全調査機構の「注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡例の分析」の提言の一部を紹介します。

①    アナフィラキシーショックはあらゆる薬剤で発症の可能性がある。複数回、安全に使用できた薬剤でも発症し得ることを認識する

②    造影剤、抗菌剤、筋弛緩剤等で発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射(ワクチンは筋肉注射)で使用する際は、少なくとも、5分間は注意深く観察する

    薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の様態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフィラキシーを疑い、アドレナリン0.3mg(成人)をためらわずに、大腿前外側部に筋肉注射する

④    第1選択として、静脈確保やエピネフィリン1mgの静注は推奨されません。

 

繰り返しになりますが、現状ではワクチン接種を早く、大勢に接種する以外ありません。そして、ワクチンが足りないとすれば、その現状、地域に即した接種を臨機応変に行う必要あります。今は高齢者より若者、感染の機会が多いであろうと思われる職種、団体を柔軟に考え、あらゆる機会を捉えて接種するべきです。

7月28日、東京都の感染者が過去最多、3000人を超え、全国の感染者は9576人と1万人に迫る勢いです。

正確な知識と備えさえあれば、ワクチンは怖くありません。コロナも恐れ過ぎることはありません。オリンピックの日本の躍進は希望への光です。真の緊急事態の意味を全員が考える時です。有事に於ける心構えと正確な情報を根拠にした、個々の冷静な判断こそが求められます。

 

先日、一医療従事者の方から匿名でお手紙を頂きました。

院内メールで職員に知らせました。ただ嬉しくて涙が出ました。金メタルを取ったアスリートの涙、少しだけ似ているかも知れません?

感謝の気持ちを込めて、ご紹介させて頂きます.

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新型コロナウイルス感染・第13報(2021年6月30日)

超高齢者に対する1000人接種

2021年6月27日(日)初めての1000人接種を行いました。正確には、3週間前に1回目を接種した、すべて85才以上504人に加え(2回目接種)、概ね80才以上の初回接種の504人の計1008人です。1000人超えという事で、多少の不安はありましたが、全く問題なくスムーズに終了しました。

6月6日の500人接種開始以来、反省と修正を重ねたことと、何より「天の時・地の利・人の和」に恵まれたことでしょう。この梅雨時、雨も降らず、暑くもありませんでしたが、孟子の教え通り、「人の和にしかず」・多くの人たちの協力のおかげでありました。

当院の職員を含む70名を超えるスタッフがこの日の接種に参加しました。約半数はボランティアの方々です。今回から、医師、看護師に加え、歯科医師会の先生方と当院の歯科医師が「打ち手」に加わりました。秩父薬剤師会、調剤薬局の先生に注射器へのワクチン分注を担って頂きました。この作業はかなり繊細で注意と根気が必要な作業です。ワクチンの知識が豊富な薬剤師が適任です。当院ではベテラン看護師もこの作業に加わります。

実際のワクチン接種は5つのブースで行いました。①病院玄関・救急入口・エントランススペースに配置した、ドライブスルーブース3箇所、②接種される方が自身で運転して来たケースに対応する完結型駐車場ブース、③タクシー、自転車、徒歩等で来院した方に対応する院内(外来)ブースの5箇所です。

問診は当院の医師、研修医に加え、医師会の先生方にもお願いしました。

各ブースには最低3人、できれば4人が必要です。①問診医 ②打ち手 ③補助(打ち手補助・本人確認・接種券へのシール貼り・接種後の注意・観察時間の指示・説明・次回接種の説明等々)

さらに、当院のドレイブスルー方式では屋外の作業があります。交通整理、敷地内待ち駐車場での車列の整理、各接種ブースへの誘導、接種後の観察専用駐車場への誘導をしなければなりません。もちろん接種後の観察と副反応への対応の準備もしています。加えて、車列での待ち時間を利用し、主に事務職員による予診票の確認作業があります。

実際には、完璧に記入された予診票を持ってくる人は少数です。体温、名前、接種希望の記載がないのは普通で、ほとんどの人は封筒のまま差し出します。従って、車列待ち時間での書類チェックはスムースな接種作業を行うためには必須です。これには当院の歯科衛生士等の歯科職員も参加しました。

車の誘導は、初回接種か2回目か、運転手自身の接種か否か、混雑具合による各ブースへの振り分け等、臨機応変の指示が必要となります。この屋外作業は最も体力を使い、きつい重労働であります。この作業に多くのボランティアの方々にご参加頂きました。もちろん、当院の若い事務員や私よりはかなり、あるいは少し若いスタッフ達も良く頑張りました。本当に頭の下がる思いであります。

 

打ち手のみならず、平沼会長はじめ秩父歯科医師会の先生方には、接種後の観察駐車場での見守りと案内を担って頂きました。熊木町会の方々、栗原所長はじめ秩父臨床医学研究所のスタッフ、職員家族、元職員、秩父メディカルフットネスのスタッフ、友人達、正に「人の和」がこのプロジェクトを可能にしました。

皆の一番の楽しみは昼食のお弁当です。長谷川歯科部長が担当となり、リクエストにもこたえ、市内の複数のレストラン、食事処に毎回オーダーしています。何種類かのお弁当選びはほっとするひと時で、疲れを忘れさせます。また、冷えた大量のスポーツ飲料等も市内の商店から直送してもらっています。終了時にはクーラーボックスは概ね空となります。

 私が最も危惧したこと、それは超高齢者が自身で運転した来た場合です。今回の1008人の内半分は2回目接種の85歳以上、半分は初回接種の若干の70代後半を含む80代です。運転手も必ずしも若者ではありません。交通整理・誘導も一筋縄ではいきません。また、接種時に車のエンジンを停止するよう指示していますが、これも100%は守られません。アイドリングストップはブレーキを緩めると走り出します。電気自動車は全くエンジン音が聞こえません。私が最も心配であったのはこれらに関わる事故でありました。

大きな赤い旗を作成したり、車の前に決して出ない事、運転者を信じない事など、十分に注意を払った結果、幸い事故は今のところ起きていません。安堵しました。

一方で、秩父地域の高齢化と高齢者の生活の実態の一端を垣間見た思いです。

 このように、ドライブスルー方式は多くの人材とエネルギーを使う負担の多い接種方式でありますが、振り返って、この方式でなければ接種できなかった、あるいは接種する機会がなかった高齢者が多いことを知りました。高齢者に対するドライブスルー方式のワクチン接種は大変有効であると確信できました。

 副反応については、80代後半と90歳を超える4人の方が、嘔気、頭痛、めまい等を訴え、救急外来で経過観察・点滴等を行いましたが、ワクチン接種が原因かは不明です。いずれも1時間程度で回復され、帰宅されました。

当院は、今年(2021年)3月12日に最初に医療従事者への先行接種を開始して以来、現在までこれを続け、5月28日よりは並行して高齢者に対する接種を行っています。さらに、6月6日(日)より超高齢者に対し、毎日曜日にドライブスルー方式により500人・1000人の接種を続けています。また特別養護老人ホームの入所者と職員200名に対し出張接種も行いました。その接種総数は延べ6700回になります。

これらのすべての接種における、接種後から観察時間内に確認された明らかに副反応と診断した症例は5件です。いずれも若い方で、すべてに喉の違和感・胸部不快感を訴えました。その内一人は、四肢体幹に蕁麻疹様の発赤が見られ、安静・点滴・抗ヒスタミン剤投与を行いましたが、酸素化、意識、血圧に問題なく、エピネヒィリン投与には至りませんでした。一応「アナフラキシー」と診断しました。他の4人は安静ですぐに軽快、念のため二人に喉頭にボスミン加、生食スプレーを行いました。

予診票・問診について記載します。

現在まで二人の方の接種を見送りました。一人は「前日に飲酒し、その後全身に発赤出現、接種時にも発赤が続いていた」もう一人は「インフルエンザワクチン接種後に倦怠感あり」 

との訴えで中止となりました。

その他、接種見送りを検討した事例は、予診の段階で蜂刺されによる「アナフラキシー」を、今回一人の方が「アナフラキシーショック(意識消失)・以後常にエピペン持参」の既往を申した3例があります。この3人は、本人の強い接種希望があり、万全の体制を整え、接種を行いました。いずれの方も問題なく終わりました。その他、37度5分位の発熱は何人かいましたが、本人の症状や体調を確認の上、30分の経過観察として接種しました。従って予診票・問診による接種見送りは今のところ2人のみです。

私の印象として、副反応の発生する確率はかなり低く、重篤な副反応はさらに少ない、十分な観察と副反応に対する準備をしていれば、多くは接種可能であると感じています。

当院では全ての接種ブースに医師・看護師を置き、緊急薬品と緊急連絡体制を整えています。

今回、テレビ朝日と医療情報サイト(m3.com)の取材を受けました。

ニュース番組やテレビ朝日ニュースサイトで配信されました。

コロナ収束に向けて、私たちの取り組みが、より迅速で大勢のワクチン接種への火種・刺激となることを心から願っています。

テレビ朝日でのニュース動画は下のリンクから見ることが出来ます。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000220647.html

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プロフィール
秩父病院理事長 花輪 峰夫

秩父病院理事長 花輪 峰夫

人と人との触れ合い医療を実践し、患者さんから信頼され、スタッフが気概を持って、地域に貢献できる病院を目指します。

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