花輪理事長の独り言
院長ブログ
その9
『研修医との付き合いの中で考え続けた。そして、一応の結論を得た。私の医師としての最終章の仕事を見つけた気がしている。それは残さなければならないものを、次代に伝えることである。
そんな訳で、平成27年10月1日、私は吉田松陰にかぶれ、松下村塾ならぬ、「花仁塾」を作った。
同年11月、埼玉医科大学主催の厚生労働省の臨床研修医指導者講習会に参加した。現在の若手医師教育の実際を自分の目で見てみたいと思った。部外者・高齢者は私一人であった。これほど疲れた講習会は初めてであった。WS(ワークショップ)GIO、OSCE、SEA、TF等の限りない英字略語を理解するだけで疲れた。そして私の教育にはこれしかないと思った。
「やって見せ、見せてやらせて、させて見て、ほめてやらねば人は動かじ」「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」連合艦隊司令長官 山本五十六の言葉である。
『時代は変わったとか、古いとか、文句のある奴は勝手にほざけ。私は、医療は70%は進化し30%は変わらないか、むしろ退化した』と思っている。
ここ数年の私の医者としてのエネルギーはここにある。強烈な違和感と腹立たしさが「花仁塾」の根源である。㊾
さて、この30%の「まとめ」を書き留めて置きたい。
『今の若手医師教育に物申したい。極端な専門志向、縦割り、先進のみを追いかけ基本教育の欠如、臓器を見て全身を診ず、病気を見ても人を診ず、なんでも鏡視下手術、開腹も手縫いも糸結びも出来ない外科医、挿管も蘇生術も出来ない医者、訴訟が怖いから専門外は見ない方が良いと教育する指導医。医療の本質の喪失』と思うのである。『少なくとも一人の医師の守備範囲は極めて縮小、基本的考え方・手技は極端に退化し、結果、非効率で不必要な時間と労力、材料が必要となり、医療費は高騰を続けて行く』細かい様だがこれも指摘しなければ気持ちが晴れない。清潔と不潔の意識の欠如である。何もしないのにまず滅菌していないゴム手袋、その不潔ゴム手袋でカストに手を突っ込んだのを見たとき、腹部の診察でゴム手袋をして触診をしたのを見た時は唖然とした。なるほど自己の感染防止には必要であろうが、認識違いも甚だしい。創処置に際し、セッシやペアンで清潔ガーゼを掴む事は、今は無いらしい。何でも不潔ゴム手袋でワシ掴みである。視点は違うが、資源の無駄などには全く興味が無いのであろうか。どんな教えを受けているのか、腹立たしくさえある。自然とこれらの道具の扱いも上達しない。
EBMという決まり文句の影で、忘れさられて消えて行く残すべきものは少なくない』㊹50
㊹平成26(2014)年1月発行 埼玉県外科医会誌 第33号、論説「地域医療を支えるための当院の取り組み」 談話室「地方外科医のボヤキ・嘆き・呟き」
㊿平成29(2017)年4月28日受付、日本外科学会雑誌 第119巻 第1号:92‐94、201 第117回日本外科学会定期学術集会 特別企画(5)「今こそ地域医療を考えるー都市と地方の外科医療と外科教育の格差を解消するにはー」
5、研修医の視点に学ぶ格差解消への模索と地域医療の役割
今回はこれくらいで良かろうかい チェストー!!!