花輪理事長の独り言
院長ブログ
今回からは同じく130周年記念誌の中の「私の20年」の中から、当院で初期研修への思いと若手医師の教育に対して私の思うところを紹介する。
その8
『平成16(2004)年、臨床研修制度が発足し、平成17年度より最初の初期研修医が来てから、すでに13年になる。若い奴との付き合いは結構面白い。もうすでに140名を超える研修医と付き合っている。彼らから学んだものが多くある。学んだと言うより驚嘆させられたと言った方が良いかも知れない。「アッペて開腹するんですね。こんなにすぐ終わるんですか。ルンバールで手術が出来るんですね」彼らの驚きは私の学びでもあった。これは時代が変わったではすまされないと思った。「今の医師教育はどうなっているんだ」と正直腹が立った。
ここ数年私は怒ってばかりいる。㊻
私は自分を学研肌とは思っていないし、まずそれは無理であるが、探究心と冒険心は持っているつもりである。以前より多少の学会発表や駄文を投稿してはいたが、近年は学会に参加することがやや多くなった。「私は古いのであろうか」を確かめるために、他を見てみたくなって、学会や講習会に参加した。
平成27年4月、第115回日本外科学会定期学術集会のディベートセクション・アッペ、ヘルニアの『腹腔鏡vs開腹』の会場で、我慢できずに手を上げた。それぞれを「良し」と主張する二人の演者の対決方式である。納得できたこと、嚙み合わないこと、呆れたことが交錯したが、実感は「若い異次元の医師集団がなんだか勝手に騒いでいる」感じであった。急性虫垂炎の手術時期について、腹腔鏡支持派は膿瘍形成のような虫垂炎の場合、まず抗菌剤治療を行い、炎症が落ち着いてより腹腔鏡下手術を行うという。これをインターバルアッペンデクトミーと言うのでそうだ。ディスカッションは若手医師の教育におよび、双方とも視野の優位性を主張していた。最後に司会者より「フロアーからの発言はありますか」「フロアーには看護婦さんと二人でアッペをやっていた時代の先生方もおられると思いますが」との誘いに堪えられなくなった。以下の発言をした。「先ほどより興味深く拝聴させて頂きましたが、ディベートですので申し上げます。手術とはその字の通り、手で行うものです。診断においても、手の感覚、触診は重要です。手は精密なセンサーであります。また、指はメスであり、鉗子であり、手の平は鈎ともなる。私は組織に手、指先で触れてこそ手術が出来ると思っています。視覚のみならず、触覚も重要です。是非とも特に若手医師の教育にはお忘れなき様お願いします」
何を馬鹿なことを言っているんだと思って聞いていたので、結構気合は入っていた。会場は一瞬シーンとしてしまった。㊾
同年6月、第40 回日本外科系連合学会学術集会のシンポジウム・外科医を取り巻く社会的問題のセクションでシンポジストとして「極端な専門医志向の弊害と対策 地域病院の役割」というお話した。内容は最近の大学病院等の若手医師教育と風潮への批判と教育における地域病院の役割を指摘したものである』㊽
㊻平成26年(2014)年12月号 DOCTOR’Smagagin「総合医養成こそ地域病院の使命だ」
㊾平成27(2015)年12月25日、医師会誌45号、「定期学術集会に参加して思ったこと(特にアッペ・ヘルニアの腹腔鏡下手術と今後の私のライフワーク
㊽平成27(2015)年9月5日発行 秩父外科医会40周年記念誌「私の5年誌・病院移転から今」「極端な専門医志向の弊害と対策」(第40回日本外科系連合学会学術集会発表内容)「第29回埼玉県外科学会 学術集会(平成26年3月8日・秩父)
今回はこれくらいで良かろうかい チェストー!!!