花輪理事長の独り言
第117回日本外科学会定期学術集会(2017年4月27日~29日・横浜)に向けて
今回は当院より3演題を発表します。
守麻理子先生の「地域の中核を担う二次救急病院での外科医としての役割」
大野哲郎先生の「外科医主導で行う臨床研究ー埼玉県秩父地域における胃がんリスクABC検診ー」
私は光栄なことに、指定演者を依頼され、現在準備中です。
[セッション名] 特別企画5
今こそ地域医療を考えるー都市と地方の外科医療と外科教育の格差を解消するにはー
演題名は自由とのことですので、色々と考えた結果、私は以下の演題としました。
以下抄録を紹介します。
研修医の視点に学ぶ格差解消への模索と地域医療の役割
Groping after Dissolution of the Differentials and Roles of Community Healthcare Learned from Trainees’ Perception
秩父病院外科 花輪峰夫 守麻理子 大野哲郎 山田正己
当院は秩父市にある52床の民間救急告示病院である。医療圏は県全体の四分の一を占め、人口約11万、圏内に高次医療機関はなく、対処不能症例の搬送には1時間を要し、都市と地方の医療格差を痛切に感じる環境にある。臨床研修制度発足以来、2大学、計8病院より約100人の初期研修医が地域医療研修を行っている。
今回の命題について、格差の最大の原因は医師の地域偏在であると考える。診療科偏在も問題である。今回我々は、都市と地方の優劣というより、研修医の視点からみた「違い?」に焦点を当て、格差解消の糸口を模索してみた。
研修レポートで「特に印象に残った大学と地域病院の違い」に注目した。主だった項目を整理すると①外来診療・外傷処置②初診から退院までの診療全体の流れ③手術と内視鏡を体験し、④手術時間の短さ⑤何でもやる外科医⑥外科医の麻酔に驚き、⑦患者と医師とスタッフとの距離の近さとチーム医療を知り、⑧夜間救急の当直医が外科内科を問わず小児科まで診ている⑨患者を断らない⑩スタッフ全員が地域医療を支えているという思いに感動した。⑪医師としての在り方⑫人生の楽しみ方を学んだ。⑬広い視野を持つ医師になりたいと思うようになった。地域偏在解消の第一歩は、若い医師達に早い時期から地域医療とその魅力に気付いてもらうことである。地方でこそ得られる自身の存在感、基本的手技、患者・家族との深い触れ合い。市民の生活に深く関わる地域医療は質と安全が担保されるべき医療の原点であり、外科医が成熟して行く上で欠かせない。外科医不足の原因も考えなければならない。多くの研修医から「救急か外科か迷っている。大学の外科では開腹できない、もっとダイナミックで外科らしい外科をやりたい」という趣旨の言葉を聞いた。彼らの多くは救急を選択した。一方で、進路を決めかねていた研修医の多くが外科に興味を示した。今の大学の極端な専門志向と鏡視下手術一辺倒の診療と教育が、彼らにとって魅力的であろうか。指導陣の意識改革も必要であろう。
今回、彼等の斬新な感性に触れ、地域病院と大学病院の根本的な違いと、それぞれの役割を改めて認識した。同時に、彼らから地域病院の役割を改めて気付かされた感がある。地域医療とは、地域を担うという気概である。格差解消には、今こそ都市と地方における医師の双方向の流れ、または循環システムを構築することが必要であろう。新専門医制度にも期待したい。
初期研修医の研修中の写真
私は、一昨年の第40回日本外科系連合学会学術集会において
シンポジウム 2、外科系診療を取り巻く社会的問題の中で
「極端な専門医志向の弊害と対策・地域病院の役割」という演題で発表しました。
やはり私が自信をもって発信できることは地域医療に関わることと思っています。そして若い医師達が成熟していく上で最も重要なことは、広く医療の現状とあり方を知ること、つまり地域医療の経験は不可欠であると考えています。そんな訳で、今回の演題も研修医と地域医療に関する演題名としました。座長の先生方、私以外の演者の先生方は大学教授の著明な方々でありますので、地域代表として精一杯話そうと思っています。
とても楽しみです。
研修医たちとバーベキュー