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花輪理事長の独り言

花輪の独り言(第四報)秩父地域の医療問題と課題

今年(2022年)3月で院長を退任しました。4月1日から、医者卒業旅行として、東海道五拾三次(日本橋から京都三条 約450km)を約1ヵ月かけて一人で歩きました。半世紀やって来た仕事を吹っ切り、次の何かを探すつもりの旅でしたが、医療者として、やり残した宿題が三つ有ることに気づいてしまいました。

それは秩父地域の問題と課題

『地域の進行癌の撲滅』 ※がん検診受診率の向上

『地域の医師の確保と若手 医師の教育』 ※奨学金制度の問題

『健康寿命の延長』 ※特定検診(メタボ検診)人間ドック等の検査の活かし方

まず『地域の進行癌の撲滅』についてお聞き下さい。

日本人の死因の一位は癌ですが、早く見つけさえすれば、癌ではまず死にません。

私の秩父での外科医としての経験、印象は、あまりにも進行癌や末期癌が多いことです。つまりは、治らない癌、あるいは再発の危険がある癌が多いという事です。医師として残念でなりません。

検診の充実と工夫が必要です。その前に個人の自覚、健康への意識、癌という病気の知識と理解が必要です。

また、当地域の『がん検診受診率』が低いことも問題です。全国的に見て、埼玉県は低くのですが、その中でも、バラツキはありますが、極端に低いところもあります。(画像をご覧ください)行政と我々医療者の啓蒙活動が必要です。

 

医療は日々進歩しています。例えば、早期に見つかった胃癌や大腸癌は、内視鏡で治せます。検査も、より安価で、簡易的に、有効に行える方法が開発されています。

しかし、残念ながら、全ての癌に対して、あるいは、全ての国民に、検査を行うことは現実的には不可能です。

私は、まず胃癌と大腸癌に注目したいと考えます。大腸癌は今急速に増えています。

便の潜血検査キットは郵送で送れます。

ほとんどの胃癌の原因はピロリ菌と判明しました。ABC検診、血液検査のみで、胃癌になり易いか否かがわかります。(リスク検診)

当院は7年前にこの検診を秩父病院の臨床研究として無料で実施し、医師会や秩父市等に提案しましたが、実現しませんでした。今度こそ、皆さまのご理解とご協力を得て、秩父郡市に、時代に則した、システムが構築される事を願っております。

 

次に『地域の医師の確保と若手医師の教育』ですが、埼玉県は人口当たりの医師の数は全国で最下位です。しかも、地域による医師偏在は顕著で、我が秩父地域の医師数は最低レベルです。

地域医療の質は当然、医師数と医師の個々の能力に左右されると言っても過言ではありません。

埼玉県では医師確保のために幾つかの対策をやっています。大学病院の誘致計画や、医師育成奨学金制度などです。県内の医師偏在についても、秩父地域のような、医師不足地域(特定地域)を指定して、優先的に医師を派遣する対策を行なっています。しかし、何故か『派遣先病院は公的公立病院に限る』のです。奨学金の返済免除要件も、『埼玉県県内の特定地域の公的公立病院で、9 年間勤務すること』なのです。これは、自治医科大学卒業生についても同じです。

私にはまったく納得できない制度です。

医師教育と言う視点から、医師が育って行く上で、重要なことは、様々な環境で修練すること。つまり、私は、公立病院だけの研修ではダメである。民間病院の医療や気風にも触れるべきであると思っています。

また、現行制度には、彼ら若手医師のキャリア形成、目指す専門科の専門医資格への配慮が全くありません。私は今、埼玉県や県医師会に出向き、あるいはメール等で、私の思いをお伝えしています。

私は、この制度、条例、規則は、『公と民の差別』と認識しております。県議会での議論を期待し、県会議員様達にお願いしているところです。秩父地域医療にとって大事なことと考えています。

 

最後に『健康寿命の延長』です。

がん検診を始め、特定健診(メタボ検診)人間ドック等の検査結果をどう生かすかと、自己の健康管理に尽きると思います。具体的には、運動と食事、栄養管理でしょうか。

健康寿命の裏返しに『ピンピンコロリ』と言う言葉があります。

 

秩父病院で『死に方』についての講演をしてもらったことがあります。講師は『人は必ず死ぬのですが、皆さんはどんな死に方をしたいですか』と尋ねてきました。日々様々な死を見ている我々は、いきなりの質問に戸惑いました。院長はどうですか?私はとっさに、心筋梗塞と答えました。私は終末期の患者さんと家族の関係、それぞれの感情の移り変わり、様相を知っています。実に様々ですが、家族が疲弊して行く様子は共通しています。心筋梗塞としたのは、苦しまずにコロッと死に、家族にあまり迷惑をかけないと考えたからです。『院長、今は心筋梗塞もそう簡単には死なない。リハビリ、介護が必要となりますよ』確かにそうだ。外科部長は癌と答えました。彼は、『癌は診断されてから死ぬまで時間ある。だから色々と考えることができる』と言いました。私は正直、驚きました。偉いとも思いました。彼は癌の専門医でもあります。若い後輩に諭された気がしました。

どんな生き方、どんな死に方をするか?

そんなことを考える事も、健康寿命の延長に繋がるかも知れません。

これらを実現するべく、様々な方面の皆様と日々お話をしております。是非とも共感していただけるようでしたら応援をお願いいたします。

 

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プロフィール
秩父病院理事長 花輪 峰夫

秩父病院理事長 花輪 峰夫

人と人との触れ合い医療を実践し、患者さんから信頼され、スタッフが気概を持って、地域に貢献できる病院を目指します。

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