花輪理事長の独り言
秩父の医療に思うこと①
秩父市長選挙が近づいてきました。
お二人の候補とも、市立病院の建て替えをうたい、特に清野氏は秩父の医療を最重点政策としています。
今回の選挙は、今まで以上に、医療問題が市民の関心を集めるに違いありません。
私は、50年以上秩父の医療に携わって来た医師として、医療が票集めのための道具に使われることを心配しています。
ですから、市民の方々に、秩父の医療の実情をお知らせすることが、私の役割と考え、思うところをお話しさせていただきます。
まず、全国的に言えることは――
1. 地方の深刻な医師不足
医師は都市部に集中し、地方の大学でさえ医師は不足しています。(地域偏在)
2. 若い医師の志向の変化
美容外科を志す医師が増え、地域医療に必要な外科、内科、小児科、産科、救急科などは非常に少なくなっています。(診療科偏在)
3. 医療の専門特化
深く狭い領域の診療しかできない医師が増えています。
4. 医療の急速な進歩
かつて高度先進医療とされたものも標準的医療となり、複数の専門医とスタッフ、高額な設備・機器が必要となっています。
5. 緊急重症疾患への新たな対応
近年、埼玉県では脳卒中や心筋梗塞などの患者を、救急車が現場から直接圏外の専門病院に搬送する素晴らしいシステムが始まっています。
6. 建設費の急騰
病院建設に限らず、急激に建築費が高騰しています。
市民の皆様、冷静に考えてください。
医師不足の秩父地域では、どんな医療をやるべきでしょうか?
私はこう考えます。
この厳しい環境下では、秩父市立病院に限らず、高度医療や身の丈を超えた医療は、残念ながら無理、やるべきではありません。
経営収支や医師確保の見通しも無く、強引に箱物だけを作ったとしたら、秩父市と市民にとって最悪の結果になることは火を見るより明らかです。
まず、現状を見ることからはじめる必要があります。
建て替えをうんぬん言う前に、
赤字経営の改善
運営体制の見直し
スタッフの意識改革
ビジョンの醸成
まず、こうしたソフト面の見直しをすべきだと思うのです。
そして、連携を強化すること。
それも、秩父郡市内にとどまらず、埼玉県単位、さらに県境を越えた連携が必要です。
これには、人と人の絆に基づいた約束からシステム作り、契約まで結ばなければならないでしょう。
その上で、医師を含む人の交流・派遣・人事まで、
公立・民間の区別のない、意識改革を伴う、連携を超えた新しい運営体制の新病院を作ったらどうでしょうか。
これは、過去にも例を見ない、大変むずかしいことだと思います。
ですが、それしか道は無いと私は思います。