秩父病院での研修を終えて

2018年10月

秩父病院に来てから今日でちょうど1ヶ月が経ちました。 初日はまだ残暑の残る汗ばむ気候でしたが、今では頬に当たる風もぐんと冷たくなり、寮の窓から見える木々の葉も赤く色づき始めました。 本当に、あっという間の1ヶ月でしたが、この1ヶ月間は、私の医師人生の中で間違いなく忘れられない時間となりました。 はじめに、花輪先生、ならびに大野先生、山田先生、守先生、ほかご指導くださった先生方に深く感謝申し上げます。 秩父病院ではたくさんの伝えきれない感動を経験しましたが、中でも特に印象に残ったことをいくつか述べさせていただきます。

まずひとつめはフットワークの軽さです。私が普段研修している大学病院では、たとえば内視鏡検査ひとつするにあたっても消化器内科へのコンサルト・内視鏡室透視室の空きの確認・患者への同意書作成などいくつもの手続きが必要になります。そのため、腹痛なら消化器内科、胸痛なら循環器内科、頭痛なら神経内科・・・と医療が細分化されており、たとえcommon deseaseであっても自分の専門外であれば診ないし、他科にコンサルト、といったような医者が少なくありません。一方、秩父病院では疑ったら自分たちで検査や治療をすぐに施行できる環境にあり、また先生方も幅広い知識・手技を獲得しておられ、私のなりたい、いわゆる「おいしゃさん」(※平仮名で書くイメージです)でいらっしゃいました。

ふたつめは、患者に対する姿勢です。大学病院では良くも悪くもチーム医療であり、方針はカンファレンスで決まりますし、入院中に主治医が転々と変わることも多く、転院となってしまえばその後の経緯がわからずじまいになってしまうこともしばしばです。また研修医が外来を担当させてもらえる機会はなく、退院まで見届けることができても、その後の外来通院をふくめ患者の日常生活まで思いをはせたことはありませんでした。 秩父病院に来てはじめて、初療から退院、退院後の外来通院までひとりの患者の治療計画を見届けることができ、大変視野が広がりました。外来の待合椅子で座っていた患者さんが、私が通りがかった時に、病院着ではない姿で元気に走り寄ってきて「先生のおかげでこんなに元気になりました。」と明るく笑いかけて下さったことは一生忘れません。 みっつめは、他大学の研修医との交流です。当然ですが、普段は他大学の研修医と仕事ができる機会はなく、とても新鮮な経験となりました。初日は仲良くなれるか不安でしたが、先生方に仕事後たくさん食事に誘って頂いたこともあり、すぐに打ち解けることができました。自大学とは異なる環境で仕事をしている同期の話は大変勉強になりましたし、もっと頑張らなくてはと良い刺激にもなりました。秩父病院での研修を選ばなければ出会うこともなかったのだと思うと感慨深いです。

長々と稚拙な文章になってしまいましたが、ここでは書ききれないほど先生方への感謝の気持ちでいっぱいです。本当に本当にありがとうございました。 大学病院に戻っても、先生方の働き方を忘れずに残りの研修を完遂したいと思います。